03-5294-5030

10:30~17:30
(木曜日・祝日を除く)

キャリアコンサルタントLibrary

人の力になりたいという気持ちが原動力!それが社会の役に立つのがキャリアコンサルタント資格です!!

その他

人事組織開発とは?進め方や手法を紹介

近年、働き方の多様化や事業環境の目まぐるしい変化に対応するため、多くの企業が組織のあり方を見直しています。「個」の成長を促す従来の人材開発だけでは乗り越えられない壁に直面し、組織全体の力を引き出す新しいアプローチが求められています。その答えの一つが「人事組織開発」です。

この記事では、人事組織開発の基本的な考え方から、具体的な進め方、そして企業の成功事例まで、分かりやすく解説します。既存の人事施策だけでは行き詰まりを感じている人事・経営企画の担当者の方は、組織の課題解決に向けた、新たな一歩を踏み出すためのヒントとしてご活用ください。

組織開発とは?

組織開発(Organization Development、略してOD)とは、組織で働く人々の関係性や相互作用に働きかけることで、組織全体の成長を目指す取り組みです。単に制度を変えたり、研修を行ったりするだけでなく、組織が自ら課題を発見し、解決していく「自走できる状態」を作り出すことを目的とします。

組織のパフォーマンス向上を目指す取り組み

組織開発の最終的なゴールは、組織のパフォーマンスを最大化することにあります。具体的には、従業員のエンゲージメント向上、部門間の連携強化、生産性の向上などが挙げられます。これらの目標を達成するために、組織内のコミュニケーションの質を高めたり、信頼関係を構築したりすることが、組織開発の中心的な活動です。

人材開発との根本的な違い

組織開発とよく比較されるのが「人材開発」です。両者は密接に関連しますが、アプローチの対象が根本的に異なります。
 

アプローチ

対象

目的

具体的な施策例

人材開発

個人(従業員)

個人の知識・スキル・能力の向上

研修、OJT、eラーニング、資格取得支援

組織開発

人と人との関係性・相互作用

組織全体の健全性・効果性の向上

ワークショップ、チームビルディング、1on1ミーティング、サーベイフィードバック

 

なぜ今、組織開発が注目されるのか

現代のビジネス環境は、変化が激しく予測困難な「VUCA時代」と呼ばれています。このような状況では、トップダウンの指示だけでは対応が追いつきません。現場の従業員一人ひとりが自律的に考え、チームとして柔軟に協力し合える組織でなければ、市場で勝ち残ることは困難です。また、働き方の多様化により、価値観の異なるメンバーが協働する機会が増えました。

組織の一体感を醸成し、多様な人材が活躍できる環境を整えるためにも、関係性の質を高める組織開発の重要性が増しているのです。

人事部が組織開発で果たすべき役割

組織開発において、人事部は中心的な役割を担います。経営と現場をつなぎ、組織全体の変革をリードする存在として、以下の3つの機能が特に重要になります。

経営と現場をつなぐハブ機能

人事部は、経営層が描くビジョンを理解し、それを現場の施策に落とし込むという重要な役割を持っています。同時に、現場で起きていることや従業員の声を経営層に届け、経営の意思決定に反映させる必要もあります。このように、経営と現場の間に立ち、双方向のコミュニケーションを円滑にするハブとしての機能が、組織開発を成功させるうえで不可欠です。

組織の課題を可視化する情報収集

効果的な組織開発を行うには、まず組織の現状を正確に把握しなければなりません。印象論や思い込みではなく、客観的な事実に基づいた課題設定が重要です。人事部は、従業員意識調査(サーベイ)やインタビュー、現場観察などを通じて、組織のリアルな情報を収集します。 集めたデータを分析し、「どこに」「どのような」課題があるのかを可視化することで、的確な打ち手へとつなげていきます。

対話と変革を促すファシリテーション

組織開発の多くの場面では、従業員同士の対話を促す「場づくり」が求められます。人事部は、ワークショップやミーティングにおいて、参加者が本音で話し合い、建設的な議論ができるように場をデザインし、進行する「ファシリテーター」としてのスキルが必要です。 中立的な立場で議論を促進し、参加者から主体的な気づきや行動変容を引き出すことが、人事部の重要な役割となります。

組織開発の基本的な進め方(6ステップ)

組織開発は、決まった型に当てはめて進めるものではありませんが、一般的に成功している事例には共通のプロセスが見られます。ここでは、基本的な6つのステップを紹介します。

ステップ1:目的の明確化

まず初めに、「何のために組織開発を行うのか」「どのような組織を目指すのか」という目的を明確にします。例えば、「イノベーションが生まれやすい風土を醸成する」「部門間の壁を取り払い、全社最適の意思決定を増やす」など、具体的で魅力的なゴールを設定することが、関係者を巻き込むための第一歩となります。

ステップ2:現状の把握と課題設定

次に、設定した目的に対して、現状がどうなっているのかを客観的に把握します。前述の通り、サーベイやインタビューを通じてデータを収集し、理想と現実のギャップを分析します。この分析結果に基づき、「目的を達成するために乗り越えるべき最も重要な課題は何か」という核心的な課題を設定します。

ステップ3:試験的なアプローチ(スモールスタート)

いきなり全社で大きな変革を試みるのはリスクが伴います。そのため、まずは特定の部門やチームを対象に、試験的な取り組み(パイロットケース)を実施しましょう。
例えば、課題意識の高い一部の部署から先行して、新しいミーティング形式やワークショップを試してみる方法もあります。まずはスモールスタートすることで、リスクを避けつつ着実に成果を出せる可能性が高くなります。

ステップ4:効果検証とフィードバック

試験的なアプローチを実施したら、必ずその効果を検証しましょう。「どのような変化が起きたか」「何がうまくいき、何がうまくいかなかったか」を振り返り、参加者からのフィードバックも収集します。この検証結果をもとに、アプローチ方法を改善し、次のアクションへとつなげていきます。

ステップ5:成功事例の共有と全社展開

パイロットケースで得られた成功体験や学びを、社内報や共有会などを通じて全社に発信しましょう。 成功のポイントや具体的なプロセスを共有することで、他部署でも「自分たちも取り組みたい」という意欲が高まります。マニュアルやツールを整備し、スムーズに取り組みやすいように支援しながら、徐々に全社へと展開していきます。

ステップ6:施策の定着と自走化支援

組織開発の施策が一時的なイベントで終わらないように、日常業務のプロセスに組み込み、定着を図ることが重要です。また、最終的には人事部が主導しなくても、各現場が自律的に組織をより良くしていく「自走化」の状態を目指します。現場のキーパーソンを育成したり、ナレッジを共有する仕組みを整えたりすることで、継続的な組織開発を支援します。

組織開発で活用される代表的な手法

組織開発には、目的に応じて様々な手法が存在します。ここでは、多くの企業で導入されている代表的なフレームワークをいくつか紹介します。

OKR(目標管理)

OKR(Objectives and Key Results)は、企業の挑戦的な目標(Objectives)と、その達成度を測るための主要な成果(Key Results)を設定し、高い頻度で共有・振り返りを行う目標管理の手法です。組織の目標と個人の目標をリンクさせ、対話を通じて全社の方向性を一致させるため、組織開発の手法としても有効とされています。

キャリアコンサルティング

専門の国家資格を持つキャリアコンサルタントが、面談を通じて従業員の悩みを丁寧にヒアリングし、本人が課題解決できるよう伴走支援するキャリア開発手法の一種です。
従業員は、悩みの原因を振り返り、課題を把握し、解決のために行動するプロセスを体験できるため、自然と「自走できる」人材に変化していきやすい点が特徴です。特に、日本マンパワーのキャリアコンサルタント養成講座では「経験代謝」という理論を用いることで、自律型人材の育成に効果が期待できます。気になる人事・経営企画ご担当者の方は、まずは無料説明会へお越しください。

キャリアコンサルタント養成講座説明会について詳しくはこちら

キャリアコンサルタント養成講座のお申込みはこちら

 

▶関連情報: キャリアコンサルタントとは?|キャリア開発のパイオニア 日本マンパワー |

1on1ミーティング

上司と部下が週に1回30分程度など、定期的かつ短いサイクルで行う1対1の面談です。業務の進捗確認だけでなく、部下の成長支援やキャリア、コンディションなどについて対話します。縦の関係性を強化し、心理的安全性を高める効果があり、多くの組織開発で中心的な施策として導入されています。

▶関連記事: 1on1で話すことに困らない!効果的なテーマと具体的な進め方を解説 | キャリアコンサルタントLibrary |

ワールドカフェ

カフェのようなリラックスした雰囲気の中で、少人数のグループに分かれて自由に対話を行う手法です。メンバーをシャッフルしながら対話を重ねることで、多様な意見やアイデアが生まれ、組織全体の集合知を形成することができます。相互理解を深め、新たな関係性を構築する際に効果的です。

サーベイフィードバック

従業員意識調査(サーベイ)の結果を、ただ報告するだけでなく、対象となる職場やチームにフィードバックし、その結果について対話するプロセスです。データに基づいて自分たちの組織の状態を客観的に振り返り、課題解決に向けたアクションプランを主体的に考えることを促します。

▶関連情報: サーベイサービス|法人のお客様|株式会社日本マンパワー

キャリアコンサルタント活用企業の事例はこちら

組織開発を成功させるためのポイント

最後に、組織開発を成功に導くために押さえておきたい3つのポイントを解説します。

経営層の理解とコミットメントを得る

組織開発は、部門横断的な協力や、時には既存の仕組みの変更も必要となるため、経営層の強力なバックアップが不可欠です。なぜ組織開発が必要なのか、それによって会社がどう変わるのかを粘り強く説明し、経営層の十分な理解と「やり抜く」というコミットメントを得ることが成功の前提となります。

ポジティブな側面に焦点を当てる

組織の課題を扱う際、「何が問題か」「誰が悪いのか」といった犯人探しに陥りがちです。しかし、それでは関係者の抵抗感を生み、前向きな変革にはつながりません。そうではなく、「私たちの強みは何か」「どうすればもっと良くなるか」といった、組織のポジティブな側面や未来の可能性に焦点を当てるアプローチ(AI: アプリシエイティブ・インクワイアリーなど)が有効です。

長期的な視点で継続的に取り組む

組織の文化や人の関係性は一朝一夕には変わりません。組織開発は特効薬ではなく、組織の体質をじっくりと変えていく漢方薬のようなものです。短期的な成果を求めすぎず、長期的な視点に立って、試行錯誤を繰り返しながら粘り強く取り組みを継続することが何よりも重要です。

まとめ

本記事では、人事組織開発の基本から具体的な進め方、手法、成功事例までを解説しました。
組織開発は、人と人との関係性に働きかけ、組織が持つ潜在能力を最大限に引き出すためのパワフルなアプローチです。この記事を参考に、自社の組織課題と向き合い、より良い組織づくりの第一歩を踏み出してみてください。


講座コラムランキング