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キャリア教育とは?学校現場でキャリアコンサルタントの専門性が求められる理由

近年、学校現場におけるキャリア教育の重要性が高まっています。また、児童・生徒一人ひとりの自己理解や意思決定を支援する専門家として、キャリアコンサルタントへの期待も広がっています。

本記事では、キャリア教育の目的や学校段階ごとの特徴、実践事例を紹介するとともに、教育現場でキャリアコンサルタントの専門性が求められる理由について解説します。

キャリア教育とは

キャリア教育とは、児童・生徒がキャリアを考えるために必要な能力や態度の育成を目標とする教育的な働きかけです。

将来の進路や生き方について主体的に考える力を養うことを目的としています。

キャリア教育は「進路指導」だけではない

「キャリア教育」というと、「進路指導」や「就職支援」を思い浮かべる方も多いかと思います。

しかし、現在のキャリア教育はそれだけを指すものではありません。

人生 100 年時代といわれる現在、一度就職した会社で定年まで働き続けることを前提としたキャリアモデルは大きく変化しています。

終身雇用の揺らぎ、副業・兼業の拡大、AI の進展、リスキリングの必要性などにより、一人ひとりが生涯にわたって自らのキャリアを主体的に築いていく時代になりました。

このような社会では、自ら考え、選択し、環境の変化に応じてキャリアを見直していく力が求められます。キャリア教育は、そうした力の土台を育てる教育として重要視されています。

キャリア教育の目的は「キャリア発達」を支援すること

キャリア教育を理解するうえで重要なのが「キャリア発達」という考え方です。

一人ひとりが発達の段階に応じて、

 ・自分を理解する

 ・他者や社会を理解する

 ・将来を考える

 ・意思決定する

 ・行動する

といった力を身につけていくプロセスを支援する教育です。

子どもたちは成長する中で、少しずつ社会や仕事について学び、自分らしい生き方や働き方を考えられるようになっていきます。

まずは、身近な大人や憧れの人の真似をしたり、仕事を体験的に学んだりすることで、「働くこと」のイメージを持つようになります。

そうした経験を重ねる中で、「自分は何が好きなのか」「何が得意なのか」「どんなことに興味があるのか」が少しずつ実感と共に分かってきます。

また、自分の目標を実現するためには学び続けることが大切だと気づき、さまざまな力を身につけていきます。

キャリア教育では、こうした成長を支え、自ら行動する力、じっくり考える力、人と協力する力など、社会の中で生きていくために必要な力を育んでいきます。

このように、キャリア教育の本質は職業に関する知識の習得だけではなく、「キャリア発達支援」にあるのです。

参照:文部科学省 「キャリア教育」

小学校・中学校・高校におけるキャリア教育の特徴

キャリア教育は、子どもたちの発達段階に応じて目的や内容が異なります。

また、近年はキャリア教育の重要性が高まる中で、学校現場ではより専門的な支援へのニーズも高まっています。ここでは、小学校・中学校・高校・それぞれにおけるキャリア教育の特徴を見ていきましょう。

小学校は「基盤形成の時期」

小学校では、自分自身や社会について理解を深めることが重視されます。

自分の良さや得意なことに気づくとともに、友人や地域の人々との関わりを通じて社会性を育み、興味や関心の幅を広げながら将来への夢や希望を描いていくことが大切です。

そのため、小学校では地域学習や仕事調べ、職業人講話などが実施されています。

働く大人との出会いや社会との接点を通じて、「世の中にはどのような仕事があるのか」「働くことにはどのような意味があるのか」を学び、将来のキャリア形成につながる基礎を築いていきます。

中学校は「現実的探索の時期」

中学校になると、生徒は自分の将来について現実的に考え始めます。

多くの学校で実施されている職場体験学習はその代表的な取り組みです。

職場体験の目的は、将来就きたい職業を決めることではありません。実際の仕事や働く人との交流を通じて、自分の興味や適性に気づくとともに、働くことの意義や社会とのつながりについて理解を深めることにあります。

この時期は、「自分にはどのような強みがあるのか」「どんなことに興味があるのか」という自己理解の重要性が高まります。

高校は「社会的移行の準備段階」

高校では、進学や就職といった重要な進路選択を控えており、キャリア教育もより具体的な将来設計や意思決定を支援する内容へと発展します。

生徒は、自分の興味や関心だけでなく、価値観や強み、将来の目標について考えながら、自らの進路を主体的に選択していくことが求められます。

一方で、働き方や生き方が多様化した現代では、以前のような分かりやすいキャリアモデルを描きにくくなっています。そのため、「やりたいことが見つからない」「進路選択に迷っている」といった悩みを抱える生徒もいます。

こうした状況では、進学先や就職先に関する情報を提供するだけでは十分とはいえません。一人ひとりの価値観や強み、興味・関心を整理しながら、自ら納得して意思決定できるよう支援することが、キャリア教育において重要になっています。

キャリアプランシート(キャリア・パスポート)が自己理解を支える

キャリア教育では、児童・生徒が自らの成長や学びを振り返るためのツールとして、キャリアプランシートやキャリア・パスポートが活用されています。

キャリア・パスポートは、小学校から高等学校までの学習や体験活動の記録を蓄積し、継続的な自己理解やキャリア形成を支援するためのツールです。

小学校では、自分の好きなことや得意なことを振り返りながら興味・関心を広げ、中学校では職場体験や学校生活の経験を通じて自身の強みや価値観への理解を深めます。さらに高校では、進学や就職などの進路選択を見据えながら、将来の目標や行動計画を整理するために活用されます。

キャリア・パスポートは小学校から高等学校まで引き継がれていきます。

一方、キャリアプランシートは、将来の目標や進路について考え、それを具体的な行動計画に落とし込むためのツールです。生徒が目標設定と振り返りを繰り返しながら、自らのキャリア形成について主体的に考える機会を提供しています。

出典:文部科学省 キャリア・パスポート

▷関連記事: キャリアプランシートの書き方を徹底解説!テンプレートと記入例で将来を描く | キャリアコンサルタントLibrary |

キャリアコンサルタントが教育現場で果たす役割

キャリア教育は、単なる進路指導から、一人ひとりのキャリア発達を支援する取り組みへと変化しています。

ここでは、キャリアコンサルタントがキャリア教育に携わることで発揮できる専門性や、メリットについて見ていきます。

自己理解と意思決定を支援する専門性

例えば、ある生徒から「将来やりたいことが分からない」と相談を受けた場合、必要なのは進学先や就職先という答えを示すことだけではありません。

どのようなことに興味や関心があり、どのような経験にやりがいを感じてきたのかを整理しながら、自分自身で進路や将来について考えられるよう支援することが重要です。

キャリアコンサルタントは、自己理解や意思決定の支援に関する知識やスキルを活かしながら、「自分自身で答えを見つけられるように」支援をします。

キャリア理論に基づく支援ができる

キャリアコンサルタントの強みの一つは、経験や勘だけに頼らず、理論に基づいて支援できることです。

例えば、キャリアコンサルタント養成講座でも学習をするスーパーのキャリア発達理論では、人は生涯にわたってキャリアを発達させていく存在であると考えます。

この考え方に立つと、学校生活の中で経験するさまざまな学びや成長もキャリア発達の一部として捉えることができます。

小学校で夢や希望を育む経験や、中学校で興味・関心を広げる経験、高校で将来像を描く経験は、いずれもその後のキャリア形成につながる重要なプロセスです。

そのため、「まだやりたいことが見つかっていない」という状態も、必ずしも問題ではなく、キャリア発達の過程における一つの段階として理解することができます。

理論に基づく視点を持つことで、目の前の不安だけではなく、長期的な成長を見据えた支援が可能になります。

学校におけるキャリアコンサルタントのキャリア教育の実践事例

キャリア教育は、職業講話や職場体験といった従来型の取り組みに加え、探究学習や個別支援、地域・企業との連携など、多様な形で実践されています。

近年は、キャリアコンサルタントが学校教育に関わる事例も増えており、生徒一人ひとりの主体的な進路選択やキャリア形成を支援する体制づくりが進んでいます。

ここでは、実際の取り組み事例を紹介します。

日本マンパワー キャリアコンサルタントが支える探究学習と進路支援

近年の高校では、「総合的な探究の時間」や「総合型選抜の拡大」などを背景に、生徒が自ら問いを立てて学び、その経験を言語化する力が求められています。

こうした中、弊社では、高校向けの「キャリア探究力開発サービス」を通じて、キャリアコンサルタントによる探究学習支援や進路支援を展開しています。

実際に東京都立高校では、探究活動のファシリテーター配置、進路相談室へのキャリア教育事業コンサルタント配置、進路実現支援プログラムなどが実施されています。生徒の自己理解や強みの言語化を支援するとともに、学校の課題に応じたプログラム設計から効果測定までを総合的にサポートしている点が特徴です。

▶出典:日本マンパワー 学校関連 支援実績例

名古屋市 キャリアナビゲーターによる専門的なキャリア形成支援

名古屋市では、児童・生徒の発達段階に応じたキャリア教育を推進するため、専門家の活用や体験型プログラムの実施など、多様な取り組みを展開しています。小学生が社会や仕事への興味を広げる機会づくりから、中学生・高校生の自己理解や進路形成支援まで、一貫したキャリア教育体制を構築している点が特徴です。

また、名古屋市では、国家資格キャリアコンサルタントを有する専門家を「キャリアナビゲーター」として市立中学校・高等学校・特別支援学校に配置しています。キャリアナビゲーターは、生徒への個別支援に加え、キャリア教育プログラムの企画・実施、教職員向け研修、保護者向け講演会などを担当し、学校全体のキャリア教育を支えています。

注目すべき点は、キャリアナビゲーターが単なる進路相談員ではなく、キャリア形成支援の専門家として学校と連携していることです。生徒一人ひとりの自己理解や意思決定を支援するとともに、教職員への助言や保護者への情報提供も行うことで、学校全体のキャリア教育の質の向上に貢献しています。

▶出典:名古屋市 キャリア教育の推進

キャリア教育は「教える」から「伴走する」へ

これらの事例に共通しているのは、キャリア教育が単なる職業紹介や進路指導ではなく、生徒一人ひとりの自己理解や意思決定を支援する取り組みへと発展していることです。キャリアコンサルタントをはじめとする専門家が学校現場に参画することで、教員だけでは担いきれない個別支援や探究活動の充実が可能になります。

今後のキャリア教育では、学校・家庭・地域・企業、そしてキャリア形成支援の専門家が連携しながら、子どもたちの主体的なキャリア形成を支える体制づくりがますます重要になるでしょう。

キャリア教育の考え方は企業にも広がっている

キャリア教育という言葉は学校教育で使われることが多いものの、その考え方は企業にも広がっています。近年は人的資本経営やキャリア自律への関心が高まり、社員一人ひとりが主体的にキャリアを考えることができるよう支援する取り組みが進んでいます。

企業で広がるキャリア支援の取り組み

企業では、従業員の主体的なキャリア形成を支援するために、キャリア面談やセルフ・キャリアドック、キャリア研修などを導入するケースが増えています。

こうした取り組みの背景には、個人が自らのキャリアを考えながら成長できる組織ほど、エンゲージメントや学習意欲の向上、人材の定着につながりやすいという考えがあります。また、生産性向上という効果も期待することができます。

学校のキャリア教育と企業のキャリア支援の共通点

学校では進路や将来の生き方について考え、企業では働き方やキャリア形成について考えます。

対象者や場面は異なりますが、いずれも自己理解を深めながら主体的に意思決定し、自らのキャリアを形成していくことを支援する取り組みである点は共通しています。

まとめ

キャリア教育は、将来の進路を決めるためだけの教育ではありません。

自分らしい生き方や働き方を実現するために必要な力を育む、キャリア発達支援です。

小学校では自己理解や社会への関心を育み、中学校では職業観や勤労観を形成します。高校では進学や就職などの進路選択を見据えながら、自己理解を深め、主体的に意思決定する力を育んでいきます。

また、キャリア教育は単なる進路指導ではなく、一人ひとりが自分らしいキャリアを形成できるよう支援する取り組みへと発展しています。

キャリア教育や学生支援に関心がある方、教育現場でより質の高い支援を行いたいと考えている方にとって、キャリアコンサルティングの知識と技法は大きな力になります。自己理解支援や意思決定支援の専門性を身につけることで、児童・生徒一人ひとりの主体的なキャリア形成を支援できるようになるでしょう。

日本マンパワーのロゴ

監修:日本マンパワーCDA事務局

全米キャリア開発協会(NCDA)の協力のもとに、日本の株式会社で初めてキャリアカウンセラー養成講座を開発して以来25年以上。

キャリア形成支援の専門家としてふさわしい知識・能力を身につけるための体系的かつ実践的なプログラムを提供しています。


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