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コラムVol.5『セルフキャリアドックの導入事例』

目次(クリックすると目次が開きます)
  1. ■はじめに
  2. ■経営理念を掲げている企業の例
  3. ■経営理念がない企業の例
  4. ■セルフ・キャリアドック応用の可能性

■はじめに

皆様こんにちは。田中道博です。7回にわたるコラムの連載。
今回は5回目です。今回は「事例(セルフ・キャリアドックを導入された企業の例)」についてです。
 

■経営理念を掲げている企業の例

ある創業社長と出会い、当該企業の人材育成に関わることになりました。
社長がおっしゃるには、社員が一同に会する機会が持てないという事情から一体感の醸成に苦慮されているとのことでした。
また、次期マネジャー層の育成について気になっているとのことでした。

同社は経営理念を掲げ、社長室に掲示されたりホームページに掲載されたりと社内外に向けた発信をされているように見えました。

「見えました」と書いたのは、理念が形骸化している企業があまりに多いためです。
理念は本来企業経営の根幹となり、意思決定の軸となるものです。従って経営理念をしっかりと活用し、日々の活動に反映させることが健全なマネジメントにつながるはずです。

この度も社長に伺ったところ、最近は理念が持つ意味やその歴史について社員に向けて話したことはないとのことでした。
特にここ10年内に入社した新しい社員は理念への認識が薄いだろうとのことでした。

こういったことはよくあることです。普段の忙しさに埋もれて、社員に向けて語る機会や社員同士で話し合う機会は取れなくても仕方ないことと言えるでしょう。

しかしながらエンゲージメントを高めるためにはこの理念を使わなければ効果は表面的なものに終わってしまいます。

私はまず、経営者である社長との対話から始めました。創業の経緯、経営理念の一言一句に込められた思いとそこに潜む社長の人生のストーリーを伺いました。

当然ながら、理念の背景には社長の人生観や固有の価値観が潜んでおり、生きるエネルギーが湧き出ていることが分かりました。

社長も自ら理念の真意を語ることで気づいたことがあったようでした。


そのまま同社の人材育成のロードマップを提案し、支援に関わらせていただくことになりました。

セルフキャリアドックステップ2


そこで私は、管理職の方々に経営理念について考える機会を持っていただこうと考えました。
せっかく思いのこもった理念があるのに、現場に浸透しきっていないことがもったいなく思えたのです。

社長と打ち合わせし管理職会議の時間をいただき、管理職の方に経営理念の意味について話し合っていただきました。
また、その流れで社長ご本人からご自身の来歴や理念に至るストーリーを語っていただく機会を持ちました。
その後、社員様との1対1のキャリアカウンセリングを行ったり、従業員アンケートなどを集計し、次なる人材育成策を提案したりしながら支援を進めました。

人に関わることですので、100%の結果を生むことは容易ではありませんが、理念を中心に一歩一歩組織風土改善に向けて進んでいる実感を持っています。

人材育成には自己理解と相互理解、エンゲージメントの強化などが重要なテーマとなりますが、経営理念を中心に据えることで一定の効果が上がることについて身を持って理解できました。

離職を減らし人材育成が機能する組織づくりが求められますが、理念が形骸化している企業は少なくなくありません。

当事例はセルフ・キャリアドックを通じ、理念を軸としたエンゲージメント強化に関わることに手ごたえを感じた事案となりました。

■経営理念がない企業の例

次に、ご紹介を受けてご縁をいただいたメーカーの例を紹介いたします。
営業人材の育成を皮切りに従業員とのエンゲージメント強化を課題とされている企業です。
社長は2代目で、先代は会長として社内におられますが、高齢のためごく一部の権限を持つのみの状況です。

当該企業には経営理念がありません。このような企業も珍しくないと思います。
しかし理念がないことには問題があります。創業社長の時代には、そのパワーや固有のカリスマ性により部下を牽引することができたかもしれません。

しかし二代目社長となると創業社長と同じような経営はできません。
そもそも社員からの見え方も変わるのです。代替わりして相応の年数が経過しているものの、
同社においては、社長がしっかりと人心掌握の上、軸を持った経営には至っていないように見受けられました。
社員の離職も少なくなく、商品力はあっても営業力や品質管理などに改善の余地がありました。

セルフキャリアドックステップ2

もともとは評価制度や人材育成の仕組みづくりを希望されての契約でしたが、私は最終ゴールとして営業力強化と評価制度の健全な運用、それを担うマネジメント人材の育成に関わらせていただくこととし支援を進めました。


その中でどうしても経営理念がないことが弊害になると感じ、ともに経営理念を作ることを社長に提案しました。


最初社長は理念の必要性にご理解を示していただけませんでしたが、粘り強く丹念にその必要性を説き前向きになっていただくことができました。

社長の言葉を受け、私自身が明文化したたき台を作成。その上で社長の心の声を経営理念として発信していただくことになったのです。

まだまだ浸透しきるには時間がかかると思いますが、理念が明確になったことで様々な課題に対する解決策にブレが無くなり、当事者全員が納得感を持った対応ができるようになりました。

マネジャー育成や営業力強化に際してもこの理念を中心に考えることができ、効果は計り知れないものとなっています。

何よりも、理念の策定段階で社長の意識が変わったように感じました。
経営への覚悟が芽生え、経営者としての素養が覚醒した、そんな印象を受けました。

同社への支援はまだまだこれからです。課題もたくさんありますが、ますます楽しみな段階になっています。

■セルフ・キャリアドック応用の可能性

以上の事例に触れたことでお気づきの方もおられると思いますが、セルフ・キャリアドックはその運用段階で様々な企業課題が判明します。キャリアコンサルタント自身の経験や専門領域を組み合わせ、発展的な支援につなげることができるのです。

経営者の方や企業人事に携わる方は、キャリアコンサルタントのキャリアカウンセリング以外の専門領域についても理解することで、その支援の範囲を広げ、より良い経営パートナーにすることが可能です。

セルフキャリアドックステップ2

私自身は営業経験が長くマネジメント経験もあるため、先の例では「営業人材の育成」や「マネジャー育成」に関わるという提案に至ったということです。また、社会保険労務士の資格を持ち制度設計や運用支援の経験があるため、これがセルフ・キャリアドックの入口になることがあれば、セルフ・キャリアドックの先に制度導入や運用支援の提案につながることもあります。

キャリアコンサルタントにとって、セルフ・キャリアドックは自分の経験を企業経営に活かす手がかりになるものと言ってもいいでしょう。

経営者の方や企業人事の方にとっては、自社の経営課題に沿い、キャリアコンサルタントを選定することでその後の選択肢が広がる可能性があると言えるでしょう。

今回は企業の例を紹介させていただきました。次回は社員の方の気づき・成長の事例を紹介いたします。お楽しみに。

<<前回のコラム

著者紹介


田中 道博 (たなか みちひろ)

株式会社あしあとみらい研究所 代表取締役/(株)日本マンパワーキャリアコンサルタント養成講座インストラクター
 

大学卒業後、旅行会社に就職し営業畑を歩む。2001年人材サービス会社に転職し、生まれ育った大阪から香川県に移住。鳥がさえずり、田畑とため池に囲まれた田舎暮らしを楽しんでいる。2008年CDA資格を取得。キャリアカウンセリングの考え方をマネジメント実務に役立てるための独自メソッドを考案・検証し、2014年個人事業主として独立。その後2017年に「株式会社あしあとみらい研究所」を設立、代表取締役に就任する。主に企業領域におけるキャリア形成支援、人材育成支援、人事諸制度の設計及び運用支援に従事するほか、インストラクターとして国家資格キャリアコンサルタントの養成講座や更新講習等を担当している。


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