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キャリア面談とは?目的や効果、具体的な進め方を徹底解説
近年、働き方の多様化や人材の流動化が進む中で、社員一人ひとりのキャリア形成を支援する「キャリア面談」の重要性が高まっています。しかし、「具体的に何をどのように進めれば良いのか分からない」「形式的な面談で終わってしまう」といった悩みを抱える人事担当者や管理職の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、キャリア面談の基本的な目的から、企業と社員双方にもたらす効果、そして面談を成功に導くための具体的な進め方やポイントまで、分かりやすく解説します。
キャリア面談とは?
キャリア面談は、単なる「人事評価」や「異動希望」の確認の場とは異なり、社員が自らのキャリアについて主体的に考え、成長していくための重要な機会です。まずは、その本質的な目的と、現代においてなぜ注目されているのかを理解しましょう。
社員のキャリア自律を促す対話の場
キャリア面談とは、社員が自身の成長の方向性や仕事で大切にしている価値観、キャリアプランについて、上司や人事担当者と対話する面談のことです。
この面談の主役はあくまで社員自身であり、対話を通じて社員が自らの強みや課題、価値観に気づき、主体的にキャリアを築いていく「キャリア自律」を促すことが最大の目的です。 企業側は、社員の考えや意向を深く理解し、その実現に向けた支援や機会提供を行います。
なぜ今キャリア面談が注目されるのか?
キャリア面談が注目される背景として、次の4つが挙げられます。
①働き方の多様化
・終身雇用や年功序列が崩れ、同じ会社に長く勤めることが当たり前ではなくなった。
・副業・兼業、フリーランス、リモートワークなど、働き方の選択肢が広がった。
→個人が自らキャリアを選択する重要性が増している。
②企業における人材確保・育成のニーズ
・少子高齢化による労働力不足により、企業は「人を辞めさせない」ことや「成長させる」ことが急務とされている。
・社員が納得感を持って働けるように、キャリア面談を通じてエンゲージメントを向上させたい。
③政策的な後押し
・厚生労働省が推進する「セルフ・キャリアドック制度」では、企業に定期的なキャリア面談の導入を推奨している。
▶関連記事: セルフ・キャリアドックの導入で組織を活性化!具体的な手順と注意点を押さえましょう | キャリアコンサルタントLibrary |・キャリアコンサルタント国家資格の創設(2016年)により、専門的に面談できる人材が増えた。
▶関連情報: キャリアコンサルタントになるには|人材開発の総合機関 日本マンパワー |④リスキリング・学び直しの潮流
・DXやAIの普及で、仕事に必要なスキルが急速に変化している。
・個人が「どんなスキルを身につけるか」を考える機会が必要となる。
→キャリア面談は、自分自身の強みや弱み価値観を整理する場にもなる。
キャリア面談は、社員の自律的な成長を促し、「個人」と「組織」双方を「成長」させるための手段として、多くの企業で導入が進んでいます。
キャリア面談がもたらす効果とメリット
| 対象 | メリット | 具体的な効果 |
| 企業側 | 人材育成と組織の活性化 | 社員の主体的な成長が促され、組織全体の生産性向上につながります。 |
| 離職率の低下と人材定着 | 社員のキャリアを支援する姿勢がエンゲージメントを高め、人材の定着に貢献します。 | |
| 社員側 | キャリアプランの明確化 | 自身の強みや課題を客観的に把握することで、今後の目標設定が容易になります。 |
| モチベーションの向上 | 会社が自身のキャリアに関心を持ってくれていると感じ、仕事への意欲が高まります。 |
キャリア面談の具体的な進め方
キャリア面談を形式的なもので終わらせないためには、適切な手順に沿って準備し、実施することが重要です。ここでは、面談を成功に導くための3つのステップを解説します。
手順1:事前準備
面談の効果は、事前準備で大きく左右されます。社員には、これまでのキャリアの振り返りや今後の希望などをまとめるための「キャリアデザインシート」を事前に記入してもらいます。これにより、社員は自身の考えを整理でき、当日の対話がスムーズになるでしょう。
一方、面談を行う上司や人事担当者も、対象社員のこれまでの経歴や実績、過去の面談記録などを確認し、面談の目的を明確にしておくことが大切です。
手順2:面談の実施
面談当日は、社員が安心して本音を話せる雰囲気作りが最も重要です。まずは気軽な会話で緊張をほぐし、面談の目的を改めて共有します。話の主役はあくまで社員であることを伝え、上司は聞き役に徹する姿勢(傾聴)を心がけましょう。
事前に記入したキャリアデザインシートの内容に基づき、「シートに記入してみてどうでしたか?」など、オープンな質問を投げかけることで、社員の内省を促します。上司からのアドバイスやフィードバックは、社員の話を十分に聞いた後に行うことが大切です。
手順3:面談後のフォローアップ
面談の最後には、今後やってみたいこと、大切にしていきたいことなどについて要約しながら社員と改めて共有しましょう。そして、面談で設定した目標や行動計画が実行されるように、定期的な進捗確認や1on1ミーティングなどを通じて継続的にフォローアップします。 面談を一過性のイベントで終わらせず、次のアクションにつなげることが、社員の成長とキャリア実現の鍵です。
キャリア面談で話すべきテーマ
キャリア面談を有意義なものにするためには、どのようなテーマについて話すかが重要です。ここでは、面談で取り上げるべき中心的なテーマを3つ紹介します。
これまでのキャリアの振り返り
まずは、社員自身にこれまでの業務経験を振り返ってもらいます。成功体験や失敗体験、やりがいを感じたこと、得意なことや苦手なことなどを具体的に語ってもらうことで、本人の価値観や強みを深く理解することができます。この振り返りが、自己分析の基礎となるのです。
今後のキャリアプランや目標
次に、未来に目を向け、今後どのような仕事に挑戦したいか、どのようなスキルを身につけたいか、将来的になりたい姿(キャリアビジョン)について話し合います。 ここで重要なのは、短期的な目標だけでなく、3年後、5年後といった中長期的な視点で考えることを促すことです。
さらに、企業の目標や事業の方向性を伝え、社員個人の目標とすり合わせることで、WIN-WINの関係を築くことができます。
現在の業務における課題や不安
社員が現在抱えている業務上の課題や人間関係の悩み、キャリアに関する不安などを率直に話してもらうことも大切です。上司がこれらの課題を共有し、一緒に考える姿勢を示すことで、信頼関係が深まります。安心して働ける環境を整えることは、パフォーマンスの向上にも直結します。
▶関連情報: キャリアコンサルタントとは?|キャリア開発のパイオニア 日本マンパワー |
キャリア面談を成功させるためのポイント
効果的なキャリア面談を実施するためには、いくつかの重要なポイントがあります。
これらを意識することで、面談の質を大きく高めることができます。
心理的安全性を確保する
社員が本音で話すためには、「一方的に否定されない」「安心して自分の気持ちを話せる」と感じられる心理的安全性の高い場を作ることが不可欠です。面談者は、評価的な態度を取らず、受容と共感の姿勢で相手の話に耳を傾けることが求められます。
傾聴と質問を使い分ける
面談者の役割は、答えを与えることではなく、社員自身が答えを見つける手助けをすることです。まずは社員の話を遮らずに、最後まで相手の立場になって聴く姿勢に徹します。そのうえで、「そう思うようになったのはいつからですか?」といったオープンクエスチョン(「はい」「いいえ」で答えられない質問)を用いながら、社員の内省を促します。
具体的な行動計画に落とし込む
面談後は、さらに行動に移せるように促しましょう。対話を通じて明確になった目標を達成するために、「いつまでに」「何を」「どのように」行うのか、具体的な行動計画(アクションプラン)に落とし込むことが重要です。社員が主体的に計画を立てられるようサポートし、会社として提供できる支援も明確に伝えましょう。
キャリア面談を成功させるためには、面談の技法を正しく理解し、習得することも効果的です。▶関連情報: キャリアコンサルタントとは?|キャリア開発のパイオニア 日本マンパワー |
【事例】キャリア面談の導入成功事例
ここでは、実際にキャリア面談を導入し、成果を上げた企業の事例を紹介します。
オリンパス株式会社:従業員主体のキャリア形成を支援する環境設計
オリンパスでは、社員一人ひとりが自らの意志・希望に基づき成長・活躍し、キャリアを築いていけるよう包括的なキャリア支援制度を導入しています。同社の特徴的な取り組みは、キャリアマネジメントシートを活用したキャリアコミュニケーション(面談)制度です。
社員は自身のこれまでの職務経験・スキルを棚卸しし、今後のキャリアビジョンを検討した後、上長と定期的にキャリアに関してのコミュニケーション(面談)を実施しています。
この面談では、自身のキャリアについての考えを深めたり実現のための手段を話し合ったりすることができ、従業員の主体的なキャリア形成を促進しています。また、国家資格であるキャリアコンサルタントの資格を持った社内カウンセラーとの面談制度も併設され、多層的なキャリア支援体制を構築しています。
【参考】 https://www.olympus.co.jp/recruit/workstyle/careersupport/
伊藤忠商事株式会社:キャリアカウンセリングの充実化
伊藤忠商事では、全従業員の多様なキャリアに関する相談・支援を幅広く行うキャリアカウンセリング室を設置しています。同室のカウンセラーは全員がキャリアコンサルタントの国家資格を有しており、従業員一人ひとりの状況に合わせて、将来のキャリアに限らず、育児や介護との両立、職場でのコミュニケーション等についても、相談者の主体的な取組みを支援しています。
入社後の節目ごとに行われる研修に合わせてキャリアカウンセリングの機会を設けるセルフ・キャリアドッグ型の仕組みを整えており、年間来室相談数は800件を超えています。守秘義務を徹底したカウンセリング室で安心して話し合うことで、主体的なキャリア形成に関する気付きが得られることを目指した制度となっています。
【参考】 https://www.itochu.co.jp/ja/csr/society/development/index.html
株式会社JTB:29歳を対象とした人事担当によるキャリア面談制度
JTBでは自律創造型人財の育成を目指し、充実したキャリア開発支援制度を整備しています。同社の特徴的な取り組みとして、5~10年先のキャリアビジョンをもとにした上司との対話に加え、29歳に対する人事担当によるキャリア面談を実施しています。また、28歳、30・40・50代を対象としたキャリアデザイン研修も併せて展開し、年代に応じた段階的なキャリア支援を行っています。
グループ全体では「一人ひとりが自分の希望するキャリアを実現していけるよう、人財交流共通制度」を通じて多彩なコースを用意しており、社員の主体的なキャリア形成と自己成長をバックアップする体制が整っています。
【参考】 https://www.jtbcorp.jp/jp/job_offer/recruit/careerculture/career/
まとめ
キャリア面談は、社員の自律的な成長を促し、企業と社員が共に発展していくための重要な施策です。 面談を成功させる鍵は、社員が安心して本音を話せる場を提供し、対話を通じて本人の気づきを促すことにあります。この記事で紹介した進め方やポイントを参考に、ぜひ貴社のキャリア面談を有意義なものにしてください。




