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キャリア・パスポートの目的とは?小中高での連携や家庭でできるサポートを解説

近年、教育現場で「キャリア・パスポート」という言葉を耳にする機会が増えたのではないでしょうか。2020年度から全国の小・中・高等学校で導入されたこの取り組みは、子どもたちの未来を切り拓く力を育むための重要なツールと位置づけられています。しかし、その具体的な内容や目的、活用方法について、まだよく知らないという方も少なくないでしょう。

この記事では、キャリア・パスポートの基本的な概要から、その目的、具体的な進め方、さらには学校や家庭でどのように活用できるかまで、分かりやすく解説します。

キャリア・パスポートとは?

キャリア・パスポートは、文部科学省が推進している取り組みで、小学校から高等学校までの学校生活を通じて、児童生徒が学習活動や学校内外での多様な経験を記録・蓄積し、振り返ることで自己理解を深め、将来の生き方やキャリア形成を考えるために活用する教材です。

2020年度から始まったキャリア教育の中核

キャリア・パスポートは、2020年度から順次施行された新しい学習指導要領に伴い、全国の小学校、中学校、高等学校で導入されました。これまでも各学校で「キャリアノート」などの名称で同様の取り組みは行われていましたが、小・中・高と学校段階を超えて活用し、学びを繋いでいく点が大きな特徴です。

目的は「生きる力」を育むこと

キャリア・パスポートの最大の目的は、変化の激しい社会をたくましく生き抜くために必要な「生きる力」を育むことです。急速に変化する社会の中で、子どもたちが主体的に自らの人生を切り拓いていくためには、従来のような知識の習得だけでなく、多様な価値観を持つ人々と協働し、新たな価値を創造していく「生きる力」が求められます。

キャリア・パスポートは、生徒自らが学びや活動の記録を付け、それを振り返ることで、自分自身の成長を実感し、次の目標設定や将来の生き方を主体的に考える力を養うことを目指しています。

ポートフォリオとの違い

キャリア・パスポートは、生徒が自身の学びのプロセスや成果を記録・蓄積していく「ポートフォリオ」の一種です。一般的なポートフォリオが作品集や学習成果の記録であるのに対し、キャリア・パスポートは、学習活動だけでなく、学校行事、部活動、地域活動、家庭での取り組みなど、より幅広い活動を対象とし、自己の成長やキャリア形成に焦点を当てている点が特徴です。
項目 キャリア・パスポート 一般的な学習ポートフォリオ
目的 自己理解、キャリア形成、生きる力の育成 学習成果の評価、学習プロセスの可視化
記録内容 教科学習、学校行事、部活動、地域活動など 主に教科学習の成果物(レポート、作品など)
活用期間 小学校から高等学校までの12年間 単年度や特定の期間
焦点 自己の成長、将来の生き方 学習内容の達成度

キャリア・パスポートで育む4つの能力

文部科学省は、キャリア教育を通じて育成すべき能力として、以下の4つの基礎的・汎用的能力を挙げています。キャリア・パスポートは、これらの能力をバランスよく育むためのツールです。

人間関係形成・社会形成能力

他者の個性や考えを理解し、尊重しながら、自分の意見を適切に表現し、協力して社会に貢献する力です。グループ活動や学校行事などの記録を通じて、他者との関わり方を振り返り、コミュニケーション能力を高めます。

自己理解・自己管理能力

自身の興味・関心や価値観を理解し、目標に向かって粘り強く取り組む力です。定期的に活動を記録し振り返ることで、自分の長所や課題を客観的に把握し、自己肯定感を育みます。

課題対応能力

身の回りの課題を発見し、解決に向けて他者と協力しながら主体的に行動する力です。探究学習やボランティア活動などの経験を記録することで、課題解決のプロセスを学びます。

キャリアプランニング能力

学ぶことや働くことの意義を理解し、多様な生き方の中から自分の役割や目標を考え、将来を設計していく力です。自身の成長記録を時系列で振り返ることで、将来の夢や目標を具体的に描く手助けとなります。

キャリア・パスポートの進め方とポイント

キャリア・パスポートを効果的に活用するためには、いくつかの重要なポイントがあります。

小学校・中学校・高等学校での一貫した活用

キャリア・パスポートは、小学校入学から高等学校卒業までの12年間、継続して記録・活用されることを前提としています。学校が変わる際には、生徒自身がこれまでの記録を持参し、次の学校へと引き継がれます。 この一貫した記録により、生徒は長期的な視点で自身の成長を振り返ることができます。

学校生活全体を記録する3つの視点

記録する内容は、特定の教科の学習だけに偏らないように注意が必要です。文部科学省は、以下の3つの視点をバランスよく含めることを推奨しています。
視点 具体例
教科学習 各教科での学び、探究活動、発表など
教科外活動 学校行事、委員会活動、部活動、係活動など
学校外の活動 ボランティア、地域活動、家庭での役割、習い事など

児童生徒自身が記録することの重要性

キャリア・パスポートは、教員が評価するためではなく、あくまで児童生徒が自らの手で記録し、活用するものです。 自分の言葉で活動を記録し、感じたことや考えたことを書き留めるプロセスそのものが、自己理解を深める重要なステップとなります。

キャリア・パスポートのメリット

キャリア・パスポートの導入は、生徒、教員双方に多くのメリットをもたらします。

生徒の自己肯定感を高め、主体的な学びの姿勢を育てる

自分の頑張りや成長の足跡が可視化されることで、生徒は達成感を得やすくなります。「できるようになったこと」を積み重ねていく経験は、自己肯定感を育み、新たな挑戦への意欲を引き出します。キャリア・パスポートの中には、クラスメイトから、強みや良さなどの肯定的なフィードバックをもらうシートが用意されています。自分では気づけなかった自身の強みに気づくきっかけにもなります。親にとっても、普段知ることのできない子どもの様子を知る機会となり、コミュニケーションのきっかけにもなります。

また、活動を記録し、次の目標を立てるというサイクルを繰り返す中で、生徒は「やらされる学習」から「自ら学ぶ」姿勢へと変化していきます。PDCAサイクル(計画・実行・評価・改善)を回す経験は、生涯にわたる学習の基礎となります。

教員が生徒理解を深める機会になる

生徒が書いた記録は、教員にとって生徒一人ひとりの興味・関心や個性、悩みを理解するための貴重な情報源となります。 これにより、個々の生徒に応じた、よりきめ細やかな指導や声かけが可能になります。

キャリア・パスポートの課題と対策

多くのメリットがある一方、導入・運用にあたってはいくつかの課題が指摘されています。

学校間での連携の難しさ

小学校から中学校、中学校から高等学校へと進学する際の引き継ぎに課題があります。様式が学校ごとに異なったり、生徒自身がファイルを持参するため紛失のリスクがあります。 地域や教育委員会が主導し、様式の標準化や連携方法のルールを整備することが求められます。

教員の負担増加への懸念

教員の業務負担が増える可能性があります。指導計画の作成や記録の確認など、多忙な教員にとって負担とならないよう、学校全体で協力体制を築き、業務を効率化する工夫が必要です。

ICT活用による効率化

これらの課題解決策として、ICTの活用が期待されています。クラウド型のキャリア・パスポートツールを導入すれば、記録の保管や引き継ぎが容易になり、教員の管理負担も軽減されます。 また、デジタルで記録することで、動画や写真なども活用でき、より豊かな振り返りが可能になります。

家庭でできるキャリア・パスポートのサポート

キャリア教育は学校だけで完結するものではなく、家庭との連携が不可欠です。保護者がキャリア・パスポートを理解し、子どもの取り組みをサポートすることが大切です。

子どもの活動に関心を持つ

子どもの記録を見て、「こんな活動をしたんだね」「頑張っているね」といった声かけが、子どもの意欲に繋がります。また、「この時どう感じた?」「次にやってみたいことはある?」など、対話をすることで、子どもは自分の考えを整理し、より深い振り返りができます。保護者は評価者ではなく、伴走者として子どもの話に耳を傾ける姿勢が大切です。

学校外での多様な体験を推奨する

キャリア・パスポートには、学校外での活動も記録します。 地域のイベントへの参加、ボランティア活動、家族旅行、家庭内での役割分担など、多様な体験の機会を提供することも、子どもの視野を広げ、豊かなキャリア形成に繋がる重要なサポートです。

キャリア・パスポート活用におけるキャリアコンサルタントの役割と効果

キャリア・パスポートの活用に、キャリア支援の専門家であるキャリアコンサルタントが関わることで、より効果的なキャリア形成支援が実現できます。

専門的なキャリア支援が受けられる

キャリアコンサルタントは、キャリア理論やカウンセリングの知識や、相談・面談のスキルを学んでいる専門家です。

キャリアコンサルタントと対話をし、支援を受けることで、「本人がまだ言語化できていない思い」や「隠れた強み・興味」などの自己理解を深めるきっかけになります。

学校の先生や、保護者とは違った第三者の立場から支援ができることが大きな特長です。

自己理解と自己分析の質が高まる

キャリア・パスポートを記入するだけでは、表面的な振り返りにとどまり、深い気づきに結びつかない場合もあります。

キャリアコンサルタントと振り返りを行うと、自分では気づきにくい価値観や得意分野を言語化する機会になります。例えば、「なぜその活動に夢中になったのか」「どんな場面で力を発揮できたのか」といった問いを重ねることで、生徒自身の強みや興味を客観的に整理できます。

また、自己分析の結果を「将来の進路選択」や「キャリアビジョン」と結びつけて考えることで、過去の経験や現在の強みを将来の進路にどう活かすかを考えるきっかけとなります。 それをキャリア・パスポートに書き残すことで、単なる記録ではなく「自分の成長の軌跡」として蓄積されます。過去の経験を振り返りながら、将来の選択に活かせる“自己理解の地図”になる点が大きなメリットです。

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まとめ

キャリア・パスポートは、子どもたちが予測困難な未来を主体的に生き抜く力を育むための、非常に重要なツールです。この取り組みは、単なる記録活動ではなく、生徒が自己と向き合い、成長を実感し、未来を描くための羅針盤となるものです。学校と家庭がその意義を共有し、連携してサポートしていくことで、子どもたちの豊かなキャリア形成を実現することができるでしょう。

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