03-5294-5030

10:30~17:30
(木曜日・祝日を除く)

キャリアコンサルタント・CDAにインタビュー

人の力になりたいという気持ちが原動力!それが社会の役に立つのがキャリアコンサルタント資格です!!

活躍事例として、キャリアコンサルタント・CDAへインタビューした内容をご覧いただけます。

インタビュー一覧はこちら

「これからの時代に求められるキャリア教育とは」イベントレポート

Event Report

  • 長田 徹 氏
  • 文部科学省/国立教育政策研究所

文部科学省初等中等教育局
 教育課程課 教科調査官
 児童生徒課 生徒指導調査官

国立教育政策研究所
 生徒指導・進路指導研究センター 総括研究官
 生徒指導・進路指導研究センター キャリア教育総括調査官
 教育課程研究センター 教育課程調査官

宮城県・仙台市立公立学校教諭,仙台市教育委員会学校教育部教育指導課指導主事,同確かな学力育成室指導主事として学力向上,キャリア教育を担当。2013年4月より現職。現職では,キャリア教育(進路指導)や特別活動を担当。
 

1.学習指導要領におけるキャリア教育とは

※本レポートは、2022年5月14日に実施したイベントの概要をまとめたレポートです。

本イベントでは文部科学省 初等中等教育局、国立教育政策研究所教育課程調査官の長田 徹様をお招きし、
キャリア教育が推進される現代において、その現状と今後について伺いました。

--------------------------------------------------------------

学習指導要領とは、「教育の内容および方法について、必要かつ合理的な事項を示す大綱的な基準」です。なぜ大綱的な基準かというと、例えば、商業高校や工業高校のような専門学科と普通科では、キャリア教育の内容や方法は大きく異なるからです。


〜中略〜


ですから、日本の学校である以上、キャリア教育をしないという選択肢はありえないわけです。

〜中略〜

中学校の学習指導要領の総則には、「生徒が、学ぶことと自己の将来のつながりを見通しながら、社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる資質・能力を身に付けていくことができるよう、特別活動を要としつつ、各教科等の特質に応じて、キャリア教育の充実を図ること。その中で、生徒が自らの生き方を考え主体的に進路を選択できるよう、学校の教育活動全体を通じ、組織的かつ計画的な進路指導を行うこと。」と書かれています。

一方、これしかキャリア教育の明記はありません。そのため、これを各学校や地域で読み込み、児童生徒の特質、地域の実態に応じて実施していくこととなります。

<イベントレポートの一部要約> 
※下部にイベントレポート完全版ダウンロードの案内あり
 

2.キャリア教育の核となる活動は「見通し、振り返り」

では、この総則「キャリア教育の充実」の1,2行目にどんなことが書かれているのか読み解いていきましょう。

先に、国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)の結果を見てみましょう。中学校の数学の結果ですが、第1回目1995年は、中学校の数学は41カ国中3位、2019年は39カ国中4位でした。我が国の児童生徒の基礎学力の高さが表れているかと思います。

一方、同じ調査の中で、世界の平均を大きく下回っているものがあります。それは、
・数学を勉強すると日常生活に役立つ。
・数学を使うことが含まれる職業に就きたい。
・理科を勉強すると日常生活に役立つ。
・理科を使うことが含まれる職業に就きたい。
です。

いずれも同様の結果が出ております。基礎学力が高くても、学校での学びが生活や将来につながらないと、この20年間日本の児童生徒がメッセージを送り続けていることがわかります。

〜中略〜

令和元年にキャリア教育に関する総合的な研究を行いました。中学生と高校生に、自分の将来や生き方、進路について考えるために学級活動もしくはホームルーム活動などの時間で担任の先生にどんなことを指導して欲しかったかを、選択肢から選んでもらいました。

中学校、高等学校を足して第1位だったのは、「自分の個性や適性を考える学習」でした。これは私の想像通りです。しかし、第2位となったのは、「就職後の離職、失業など、将来起こりうる人生上の諸リスクへの対応」でした。

〜中略〜

「価値がある人間ですか」と世界の高校生に聞くと、なぜか日本の高校生だけが極端に低い。逆に「自分は駄目な人間だと思いますか」と聞くと、諸外国に比べてダントツに日本の高校生は高い。さらに、「私の参加により変えてほしい社会現象が少しでも変えられるかもしれない。」いわゆる社会参画意識を問うていますが、こちらも韓国、中国、アメリカの中学生、高校生に比べて、日本の中学生、高校生が極端に低い。

〜中略〜

そういった過程を経て、学習指導要領の総則に、自分のよさや可能性を認識する、学びの意義を実感する、学びのつながりを実感するための一つの取組を、「見通し、振り返る活動」と明示したのです。そして、その「見通し、振り返る活動」の具体的な一つの場面をキャリア教育に求めたということです。


<イベントレポートの一部要約>
※下部にイベントレポート完全版ダウンロードの案内あり

3.基礎的・汎用的能力は学校で具体化

ここまで学習指導要領の総則「キャリア教育の充実」の1、2行目を読み解いてきました。それ以降には、資質・能力について書かれています。

学習指導要領は、学校で学ぶことによって何ができるようになるのか、いわゆる資質・能力ベースで改訂されています。これまで学校が大事にしてきた「知識及び技能」、「思考力、判断力、表現力等」は、これまで以上に大事にしていかなければなりません。
加えて、知識や技能、思考力、判断力、表現力等を総合的・統合的に使って、どのように世界、社会と関わりよりよい人生を送るのか、「学びに向かう力、人間性等」が新たに整理されたわけです。

〜中略〜

実は学校のキャリア教育の世界で、大きな失敗の経験がここにあります。

平成11年にキャリア教育という考え方が提唱された後、平成14年に全国の学校の先生方のため、国立教育政策研究所が、小学校、中学校、高等学校で活用できるように、働いたときに必要となる力を、4つの領域と8つの能力で整理しました。「4領域8能力」と言われるものです。

しかしこれがうまくいきませんでした。タイトルに「例」と書いてあり、あくまでも例示だったのです。しかし、ここに書かれている資質・能力が全国津々浦々の学校でコピペされていきました。それではうまくいきません。例えば、都会の小学校も、地方の小学校も同じ資質・能力を追います。普通科学校も工業高校も、同じ力を追います。そんなキャリア教育、うまくいくわけありませんよね。

そこで、平成23年の中教審答申を受け、先ほどの「4領域8能力」を一旦横に置いて、大人になって働いたときに必要となる力を4つの大括りのラベルで示しました。「基礎的・汎用的能力」と言うものです。なぜ大きなラベルだけを示したかというと、具体は学校で決めていくからです。


<イベントレポートの一部要約>
※下部にイベントレポート完全版ダウンロードの案内あり
 

4.学びをつなぐホームルーム活動

ここまで、学習指導要領の総則「キャリア教育の充実」の2行目から4行目にかけて読み解いてきました。では、残り2行を見ていきましょう。そこには、「特別活動を要としつつ各教科等の特質に応じてキャリア教育の充実を図る」と書かれています。

岡山県立津山商業高等学校の事例をご紹介します。津山商業高校、商業科ですから、キャリア教育はとっても充実しており、インターンシップ、社会人講話、商店街とのかかわりや、修学旅行などでの企業訪問もたくさん行われています。

〜中略〜

こんな素敵なキャリア教育をたくさんやっている学校なのに、生徒や先生方にアンケートをとってみると、学びがつながっていませんでした。「楽しかった」「感動した」が評価の目安になっていました。

このように、おそらく多くの全国の小学校、中学校、高等学校でたくさんのキャリア教育の「シャワー」を準備されているのではないでしょうか。キャリアの断片をたくさん準備しても、実際はそれが自分の人生や将来につながっていない。学校で学んだことが、将来役立つとか、自分の職業につながっていくという認識ができていないのです。しかし、そういったキャリアをまとめつなぐような時間を、今の学校で新たに設けることはできません。

しかし、そういったまとめる時間は、そもそもあるのです。
小学校、中学校では学級活動、高等学校ではホームルーム活動です。

津山商業高校は、たくさん準備したキャリアの断片が、生徒の中でつながっていかない、将来につながっていかないことを踏まえ、年に一、二度、ホームルーム活動で生徒の学びを将来の生活につなぐように工夫しています。

たくさんあったアイデア集の中から、一つだけご紹介します。
〜詳しい事例はイベントレポートにてご確認ください〜


【参考リンク】
・文部科学省 学習指導要領「生きる力」
  https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/index.htm

・国立教育政策研究所 生徒指導・進路指導研究センター
  https://www.nier.go.jp/04_kenkyu_annai/div09-shido.html

<イベントレポートの一部要約>



 

インタビュー一覧はこちら