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社労士が解説!Vol.1『これってパワハラ?職場におけるパワーハラスメントとは?』

Instructor's Column

  • 原 博子 氏
  • キャリアコンサルタント・CDA [千葉県]

キャリアコンサルタント養成講座インストラクター(千葉県)

大学卒業後、不動産会社で勤務しつつ、シナリオライターとしても活動。退職後はシナリオライターとして独立したものの、結婚・出産を機に昼夜問わずの仕事であるライター業を継続することが困難になり、悩んだ末キャリアチェンジ。自宅近くの社会保険労務士事務所でパートをしつつ資格取得を目指し、社会保険労務士資格取得。その後、社労士として活動する中で、「組織もそこで働く人もHappyになること」を模索していたところ、キャリアコンサルタントの学びと出逢う。

現在は、労務管理コンサルタント・キャリアコンサルタントとして、企業や行政機関を中心に活動中。専門領域は「治療と仕事の両立支援」及び「障害者雇用」。

■はじめに

皆さん、はじめまして。
わたしは、「組織も個人もHAPPYに」をモットーに社会保険労務士とキャリアコンサルタントの二足のワラジで活動しています。

このコラムでは数回に渡り、労働法規関係の最近の法改正を解説しつつ、わたしが社労士としてキャリアコンサルタントとして日々を過ごしている中で感じ、考えていることを書いていきたいなぁ、と思っています。

さて、記念すべき第1回目は「パワーハラスメント」についてです。第1回目から、なんというかとてもハードなテーマになってしまい恐縮です。

でも、この春は、パワーハラスメント防止措置が中小企業にも義務化されたタイミングですので、初回はこのテーマからスタートにしてみたいと思います。

■これってパワハラ?

■パワーハラスメント防止措置が中小企業に事業主にも義務化
今まで努力義務だった中小企業に対するパワーハラスメント防止措置が、この春(令和4年4月1日)から義務化されました。

【労働施策総合推進法に基づく『パワーハラスメント防止措置』が中小企業にも義務化】
※参考URL: https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000855268.pdf

■職場におけるパワーハラスメントとは?
さて、具体的な内容に入る前に、まずは皆さんに質問です。
以下の行為はパワーハラスメントに該当し得ると思いますか?

■職場におけるパワーハラスメントの定義

それでは、そもそも職場におけるパワーハラスメントというのはどのような行為を指すのでしょうか?
職場で行われる、以下の1〜3要素全てを満たす行為を言います。

1.優位的な関係を背景とした言動
2.業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
3.労働者の就業環境が害されるもの


※客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導は該当しません。
(厚生労働省編 「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!)リーフレットから抜粋)
厚生労働省「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!」
※参考URL: https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000611025.pdf

■パワハラを生まない組織作りのために〜Tさんとの出逢い〜

ある企業の課長さんから、こんな相談を受けました。

「Tさんという社員がいるんだけど、Tさんの元に配属されたパートさんは、すぐに『辞めたい』って言ってくるんだ。何度もそういったことが続くので、パートさんに聞いたところ、『ちょっとミスしたらTさんに非常にキツイ言い方をされた』『ミスをする奴はいらない、って言われた』って」

パートさんたちからは現在のところパワハラの訴えは直接なかったとはいえ、これは見過ごせないと思い、課長さんはTさんを呼んで直接注意をしたそうです。

「はい、わかりました。今後気を付けます」

このようにTさんは言ったようですが、本当にTさんの心に響いているか、課長さんは不安に感じたようです。そのようなタイミングの中、わたしがTさんにキャリアコンサルティングを担当する機会に恵まれました。

様々な話をTさんのとしていく中で、Tさんの中に「ミスを絶対許さない」というご自身の「モノの見方、考え方」があるということにTさんが気づいていきました。

「パートさんがミスした時、なんかすごく感情的になってしまうんですよね・・・それはいけない、ってわかっているし、この間、課長にも注意されて気を付けよう、って思うんですけど・・・」

なにゆえ、Tさんは、他人のミスを絶対許せない気持ちを抱いているのか?
キャリアコンサルティングの中で、Tさんはその気持ちを抱くことになった背景にある経験について思いを巡らせていった結果、「テストでケアレスミスをしたことを厳しく叱責されたご両親との経験」や「部活動でミスをして居残りさせられた経験」が語られてきました。


そのような経験を言葉にされる中で、「ミスをすることに対する恐れ」がTさんの中にあったことにTさん自身が気づいていったように感じました。

 「ミスしちゃいけない、って自分に言い聞かせてきましたが、その気持ちが周りの人に対し『ミスを許さない』って態度になっちゃったのかもしれません・・・」

「ミスを恐れる自分」「ミスを許せないでいる自分」にTさんが向きあい、その自分を受け容れ、認めたことによって、キャリアコンサルティングの最後にはパートさんに感情的に振舞ってしまったことへの申し訳なさなども言葉にされていきました。
このキャリアコンサルティングを境に、Tさんは今までのように感情的にパートさんにあたることもなくなった、課長から報告を受けました。

もちろんパワハラに関連する問題がすべてこのような展開になるとは限りません。パワハラを苦に命を落とす方がいる現状も重く受け止め、迅速かつ適正に対処することが必要です。今、まさに起きているパワハラの訴えに対して、何よりもその対応にスピード感が求められます。
同時に「パワハラを生まない組織作り」をするということも大切になります。
キャリアコンサルティングは「問題を取り除く」という対処療法的な関わりをするのではなく、「ミスを許せないTさんはどんなTさんなんだろう。Tさんは何を護ろうとしているんだろう」といったその方の「モノの見方・考え方」を大切にし、関わっていきます。すると、Tさんがされたように、ご自分の内側を見つめていきます。自問自答していくのです。
自分の内側に自分で触れることができたとき、人は本当の意味での行動変容につながっていくと、わたしはこのキャリアコンサルタントという活動をしながら、感じています。

パワハラは絶対に許される行為でなく、わたし自身は断固としてその行為の撲滅のために社会保険労務士としてキャリアコンサルタントとして力を注いでいきたいと思います。「パワハラ防止の法律がある⇒法規制で労働者を守る」ということは必要であり、そこは議論の余地はないと思います。

ただ、ここで忘れてはならないのは、「パワハラは『人間』が関わる問題である」というところです。人間が関わる問題だからこそ、本当の意味でパワハラをこの世からなくすためには、「パワハラを生み出す人間の心」というものへ焦点をあてていく関わりが必要なのだと感じています。

わたしたちキャリアコンサルタントは「人間の心」に焦点をあてられる専門家であるように、わたしは日々感じています。

それではまた、次回お逢いしましょう! 

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