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キャリアコンサルタント・CDAにインタビュー

人の力になりたいという気持ちが原動力!それが社会の役に立つのがキャリアコンサルタント資格です!!

活躍事例として、キャリアコンサルタント・CDAへインタビューした内容をご覧いただけます。

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キャリアコンサルタント養成講座の歴史(3)~行政でのキャリアカウンセラー活用の動き(後)~

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  • 田中 稔哉 氏
  • 日本マンパワー会長/キャリアコンサルティング協議会理事

所属先:株式会社日本マンパワー

メーカーで人事(採用・教育・労務・人事企画)業務に携わった後、コンサルティング会社にて新規事業開発、関連会社経営に従事。
就職氷河期の大学生の就職支援事業の立ち上げを経て、日本マンパワー入社。
日本マンパワーではキャリアカウンセラー(CDA)養成講座の開発、日本キャリア開発協会(JCDA)の設立、大学・高校向けキャリア教育プログラム開発、行政機関への雇用対策事業の提案・企画・運営、ジョブカフェのチーフカウンセラーなどの業務を経験し、現在は日本マンパワーの会長を務める。キャリアコンサルティング協議会理事

キャリアコンサルタント養成講座の歴史

〜キャリアカウンセラーが生まれた背景〜

現在、国家資格となったキャリアコンサルタント資格。実は、日本マンパワーが1999年に株式会社としては最初に「キャリアカウンセラー(CDA)養成講座」の募集を開始しています。なぜ、その当時キャリアカウンセラーに注目したのか、その背景に迫ります。

今回は、前回に引き続き、日本マンパワーの会長の田中稔哉さんにお話を伺いました。

ジョブカフェでのキャリアカウンセリング

 ジョブカフェの相談は対面以外に電話、メール、一部の自治体ではテレビ会議システムを使った相談もありました。ある県で実施した深夜(22時から翌未明まで)の電話カウンセリングが思い出深いです。

 地元テレビ番組とタイアップし、番組内で「では今からジョブカフェで仕事や就職の悩みの電話相談を受け付けます」とアナウンスされます。すると一斉にジョブカフェの専用回線が鳴ります。キャリアカウンセラーを10人程度配置していたのですが、毎回すぐ全回線が埋まりました。対応困難になったキャリアカウンセラーが手をあげると、私が交代して対応しました。ここでの相談者には自殺念慮がある方、お酒に酔っている方、薬物の使用を伝えてくる方、社会への不満をぶちまけ続ける方、ただ話し相手が欲しい方などバラエティに富んだ方々が多くいました。

山口しごとセンター内の様子

 もちろん他のジョブカフェでも「誰でも気軽に相談にお越しください」と謳っているので、相談者にはメンタル不調者や発達障害の診断がついている方、診断はついていないけれどもそれらが疑われる方が想像以上に多くいました。特に難しいのは見捨てられ不安の強いパーソナリティに偏りがある方でした。ストーカーのようになる方もいて、一人のキャリアカウンセラーでは抱えきれなくなり、他のキャリアカウンセラーに交代しようとすると、それまでの態度から一変し、激しい憎悪を向けてきます。ここには書けないような事態になり、警察と連携したことも何度となくあります。

 これらはこれまでに経験したことのない仕事でしたが、新規の事業なので社内には教えてくれる人はおらず、社外の精神科医、臨床心理士、看護師、精神保健福祉センター、発達障害支援センター、福祉施設、などに行って教えを乞う日々でした。また、公平平等が求められる行政サービスの一環ゆえ、簡単にリファーすることはできませんでした。そもそもリファー先も少なく、受託地域でリファー先の開拓から取り組みました。アポイントを取って直接足を運び、自施設の説明、お願いしたい支援内容の提示などをするのですが、多忙な施設や機関が多く苦労しました。

難しいクライエント対応からの学び

 難しい相談者の対応はキャリアカウンセラー側の負担も大きく、心身を病むキャリアカウンセラーも珍しくありませんでした。私は難しいケースやこじれた相談者を担当しながら、当時は自社に所属し全国にいるキャリアカウンセラーからの相談を24時間電話で受けていました。キャリアカウンセラーの主治医のところへ同行し、この業務を辞めることも含め、どう対応していくべきか相談したことも何度かあります。さらに相談者をはじめとする利用者からのクレームの対応も常に抱えている状態でした。行政からの年度ごとの受託業務なので厳しく指導監督されていますし、トラブルの対応を誤ると、次年度の受託ができなくなります。顛末書、始末書を書いたことは何度もあります。

講演中の様子

 このような業務にあたる中で、公的な施設でのキャリアカウンセラーに求められる態度、スキル、知識の不足を痛感しました。その中の一つとして臨床心理の勉強をはじめました。大学は教育学科で心理学関係の授業もたくさん履修していましたが、あらためて関連の講座に通い、事例検討会に参加し、スーパービジョンと教育分析を受けました。当時はスーパーバイザーを探すのも難しく、受講した講座を担当されていた産業領域での経験が豊富な精神科医や臨床心理士に依頼しました。資格としては精神保健福祉士を取得しました。自分でもあの状況でよく勉強できたと思います。その後、1級キャリアコンサルティング技能士、公認心理師を取得し、今年の春、専門職大学院(実務教育学)を修了しました。論文のテーマは「キャリアコンサルティングにおけるネガティブ・ケイパビリティ」です。

 ジョブカフェなどの自治体の雇用対策では就職相談だけでなく、大学や高校でのキャリア教育を行い、企業に対する定着支援、人材育成の事業も担っています。キャリア教育ではキャリア教育関連の授業や講演だけでなく、教員向け、保護者向けの事業もありました。大きな事業では県下全高校を4年にわたり巡回する事業(初年度は内容理解のため教員向け、次年度からは生徒向け)や、高校3年間のキャリア教育プログラム(キャリア教育の体系と年間10数コマの授業案を3年分)を作成しモデル校で実施してそのコンテンツ(テキスト、授業の進め方、映像教材、ワークシートなど)を納品するといったものがありました。

キャリアコンサルタント養成講座へ現場実践ノウハウをフィードバック

 ジョブカフェの運営をはじめとする行政事業へ当社のキャリアカウンセラー(CDA)養成のノウハウを投入すると同時に、そこでの経験や学びを養成講座にフィードバックするという好循環が起きました。実践と学びの相互作用によりそれぞれがブラッシュアップされていきました。その後活発になる企業へのキャリアカウンセリングの導入でも同様のことが起きています。

 現在ではかかわりのある自治体は少なくなりました。ただし山口県の 山口しごとセンター 事業は、指定管理契約で当初から現在まで20年にわたり継続して担わせていただいています。今では私も東京に落ち着き、会社全体を見る立場になりました。振り返るとこの時期の経験は本当に自分を鍛えてくれたと思っています。この記事を書きながら、あらためて後進に経験を語ることの大切さを感じております。

山口しごとセンター

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