ちょっと一息

キャリアコンサルタントのチーム取り組み事例NEW

3人の得意分野を活かして中小企業の人材育成支援をスタート

[2019/11/28]

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 キャリアコンサルタントは、個人を対象とした1対1の相談対応をするだけではありません。ネットワークの構築次第でその活動領域は大きく拡がります。
 今回ご紹介するのは、3人でチームを組んで共同で取り組む仕事として中小企業の人材育成にあたっている貴重な事例です。チームで取り組むことのメリットや、取り組みに欠かせないこと、中小企業を対象とすることの意義、課題の抽出とその活かし方など、さまざまな面で新しい発見があるのではないでしょうか。中小企業の経営者またそこで働く方にとっても非常に有用な情報だと思います。
 お話をうかがったのは、社会保険労務士とキャリアコンサルタント、CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)のトリプル資格を保有している原田太さんです。ぜひご一読いただき、今後の活動にお役立てください。


●今回お話を聞いたのは・・・
 ぽぷら社会保険労務士法人 社会保険労務士
 国家資格キャリアコンサルタント
 CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)
 原田 太 さん


資格ホルダー同士のつながり

 私は29歳の時に社会保険労務士(以下、社労士)の資格を取得し、札幌市労務管理コンサルタントとして活動していました。社労士は、会社の規則や仕組みづくり、労務関連手続きなどの専門業務に長けている一方で、従業員の内面に関わる対策・対応があまり得意ではありません。私自身その自覚があり、「このままではクライアント企業様に対して本当の意味での相談相手になれない」と感じていました。キャリアコンサルタントの資格を取ろうと考えたのは、そうした理由からです。
 キャリアコンサルタント、特にCDAは資格ホルダー同士のつながりが密接で幅広いため、多くの心強い味方を見つけることができます。ただ私は、東京で日本マンパワーの『キャリアカウンセラー養成講座』(現在の『キャリアコンサルタント養成講座』の前身)を受講したため、札幌市内にキャリアコンサルタントの知人がいませんでした。そんな事情を察し、試験勉強でお世話になった人が紹介してくれたことがきっかけで、札幌のキャリアコンサルタント2人と会食する機会を得られました。後にチームで活動することになる、藤田美輪さん相馬ひとみさんです。


二人で協力して新しい人事施策を提案

 そうした縁から、ある会社のキャリアコンサルティングを藤田さんにお願いしました。その会社は、私の所属するぽぷら社会保険労務士法人が顧問契約を結んでいるクライアント様で、有限会社小堀配管工業所と言います。給排水設備や空調設備、各種配管工事を主な事業とする建設会社です。社員10人に満たない中小企業ですが社長は人材教育に熱心な方で、セルフ・キャリアドック制度を導入したのです。セルフ・キャリアドックとは、従業員のキャリア形成を支援するため、定期的にキャリアコンサルティングの機会を企業が設ける仕組みのことです。
 その後、私が小堀配管工業所様の担当になりました。すると、社長から人材育成についての相談がありました。社員のコミュニケーション力営業力に関することです。社員のほとんどは技術職、いわゆる職人さんなのですが、「これからの職人は技術のみならずそうした能力が大切」だとのお話でした。
 同じ頃、藤田さんも、セルフ・キャリアドックの面談を通して社員それぞれの課題を見つけるとともに、会社に対する社員の要望や不満も聴いていたようです。
 そこで、私と藤田さんは社員および会社の課題を洗い出した上で、教育研修人事考課制度の導入を提案しました。教育研修は、社員のコミュニケーション力向上やモチベーション向上を目指したもので、藤田さんが提案書を作成してくれました。私は人事考課制度を担当し、社員のスキルアップ不満解消を意図しました。
 キャリアコンサルト資格を取る前の私であれば、おそらくそんなことはしなかったでしょう。したとしても、時流に乗った表面的な制度提案に留まっていたのではないでしょうか。でも、資格を通して、企業や社員にはそれぞれの個別の背景や歴史、ストーリーがあることを学んだので、それらを深掘りして大事にするようになりました。社員一人ひとりの内面までよく観察して理解しようとする姿勢ができました。ですから、提案には、「社員にとっても会社にとっても、より良くなるように」という想いを込めていました。きっと藤田さんも同じ想いだったはずです。


同じ資格を持っていたから迅速に実現できた

 教育研修の提案は社長に全面的に受け入れられ、2017年秋から開始しました。私たちが提案してわずか数ヵ月後のことです。このような素早い動きができたのは、藤田さんと私が同じキャリアコンサルタントの資格を持っていたからだと思います。というのは、次のような理由からです。
 藤田さんは、キャリアコンサルティングによって社員の要望や不満を聴いていて、それを改善できればと考えていました。しかし、そうした改善は一般的に容易ではありません。提案自体が経営層までなかなか伝えられませんし、伝わったとしても改善策につながるとは限らないからです。でも、小堀配管工業所様のケースでは、私もキャリアコンサルタントですから、藤田さんの目的や意図をよく理解できました。そのため、人材教育・人事考課制度・社員の要望というトータルな視点から会社を良くする改善策として、教育研修が必要であることを、すぐに社長に伝えることができました。しかも、この提案はキャリアコンサルティングを通したもの、つまり現場の社員の想いが詰まったものです。それが社長に伝わったからこそ、すぐに受け入れてくださったのだと思います。
 このように迅速に実現できたこと、また、十分に目的・意図を理解して社長に伝えられたことについて、藤田さんから後日「本当にありがたい」と言われました。キャリアコンサルタントは個人と社会をつなぐ存在であると言われますが、小堀配管工業所様と藤田さん双方のありたい方向性をつなぎ、改善策を推進する役割としてお手伝いできたように思います。ともにキャリアコンサルタントでなければ、こうしたリレーションは生まれなかったでしょう。その意味で、キャリコンサルタント同士のチームは相乗効果を生むのだと思います。


月1回の研修で社員が大きく変化

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 こうして実現した教育研修は、毎月1回、全社員参加が原則です。仕事の工期などの関係で、社員の方々は時間調整が難しかったかと思いますが、社長が本気で推奨していることもあり、参加率はほぼ100%でした。
 研修のプログラムはすべて藤田さんにお任せしています。なぜなら、社労士は事業主に近い立場ですので、社員の方々が警戒して本音を語ってくれない可能性があるからです。しかしながら、内容や実施中の様子は常に共有していますので、社員の方々が変化したことは私も手に取るようにわかっています。
 毎月1回の研修を丸2年間続けてきたことで、若手社員を中心にとても活発になりました。職人気質で口数の少なかった社員が、社長などに対しても堂々と積極的に発言できるようになったのです。特に、現場のリーダーを務める工事課長立ち振る舞いから一変し、社長と社員の間に入まとめ役としてご活躍されています。工事課長ご自身も、「会社の風通しが良くなった」「問題意識を持って業務に取り組むようになった」と研修の効果を評価してくれています。
 おそらく、中小企業においては会社の仕組みよりも職場のモチベーションが仕事ぶりに影響しやすく、効果が現れやすいのだと思います。また、社長が本気で変革する意志を持たれていたおかげでもあります。こうした姿を拝見すると、大きなやりがいを感じます。


転居でチーム支援が困難になっても・・

 しかし、実は昨年の春に、チームによる支援が危うくなったことがあります。藤田さんが福岡に転居することになったのです。福岡から頻繁に来札することは難しくなります。そこで登場するのが、以前お会いした相馬さんです。藤田さんと相馬さんはCDA仲間として従来からの友人で、お互いの仕事ぶりも把握しています。そうして相談した結果、藤田さんが研修内容を策定して、相馬さんが研修講師を務めるという形で分担することとしました。必要がある時は、インターネットの会議システムを使ってミーティングをしています。
 藤田さんの研修講師能力や分析能力、相馬さんのファシリテーション能力や温かい雰囲気づくりなどはすばらしく、私は2人を全面的に信頼しています。

 ちなみに、年数回、藤田さんが福岡から札幌に出張し、そのタイミングで小堀配管工業所様の経営会議を開催していただき、課題の確認将来のビジョンに向けて、じっくりとお話ししています。この11月には藤田さんと相馬さんが全社員を対象に目標管理面談を兼ねたキャリアコンサルティングを実施しました。


                                                              同じビジョンを描くことが重要

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 実際にチームで取り組んでみてわかったのは、クライアント企業様の将来に対して同じビジョンを描けているかどうかが最も重要だということです。私たちは、小堀配管工業所様の5年後・10年後を見据えて、会社を良くするというビジョンを共有しています。そのビジョンの実現のためには、社員の方々の気持ちが非常に大事です。どんなに優れたスキルを持った人でも、「この会社でがんばりたい」という感情がわかなければ、スキルは十分に発揮されないからです。その点で、全社員にキャリアコンサルティングを行い、社員の方々の個性や課題を把握した上で、毎月の研修に反映し、それによって各社員の満足度が上がるというサイクルは、一つのモデルとして他の会社の支援にも活用できると思います。
 また、チームで支援をしていると、自然に支援者同士が補完し合います。私の場合は、人事考課制度策定にあたって、お二人からの「果たしてその内容で社員が受け入れられるか」という助言が非常に参考になりました。もし私がキャリアコンサルタントでなく、藤田さんや相馬さんに出会ってなければ、おそらく「形だけの人事考課制度」を作って、うまく機能しないまま終わっていたことでしょう。現在は、社長のお考えに沿った上で、お二人の助言を参考に見直しているところです。


きっかけはキャリアコンサルティング

 繰り返しになりますが、このようにそれぞれの得意分野やネットワーク、経験を発揮できるのは、キャリアコンサルタント/CDAという共通の資格、共通のスキルを保有しているからだと思います。特に今回のケースでは、キャリアコンサルティングの実施が新たな人事施策のきっかけになっています。キャリアコンサルティングが企業にとって大きな価値があることを、小堀配管工業所様にも実感していただくことができました。
 また実は、藤田さんがキャリアコンサルティングを行っている別の会社でも、チームを組んで対応しています。キャリアコンサルティングから見えてくる課題をチームで改善していく手法は、クライアント企業様の成長はもちろん、キャリアコンサルタントにとっても活動の場の拡大につながるように思います。
 特に中小企業の場合は、社内に課題があっても「どのように解決すればわからない」「誰に相談すればいいかわからない」という状況が生じがちです。
 そうした会社にとって、今後私たちキャリア支援の専門家によるサポートは必須になっていくと思います。多くの中小企業の経営者から信頼されるパートナーになれるよう、今後も努めていきたいと考えています。

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