イベントレポート

グッドキャリア企業アワード受賞企業から学ぶ経営に資するキャリア開発支援のあり方

 株式会社日本マンパワーは、企業の抱える課題を一緒に考え、解決の糸口を探る場として「HRフェス」を開催しています。2019年秋フェスでは、テーマの1つに「キャリア自律」を取り挙げ、関連イベントを実施しました。
 イベントでは、従業員の自律的なキャリア開発支援を総合的に推進されている富士通ソーシアルサイエンスラボラトリ様にお伺いし、実際のキャリア支援室を見学させていただきました。また、キャリア支援室のご担当者様から、効果的なキャリア開発支援のあり方やこれまでのご経験から得られた運用のポイント等をお話いただきました。本レポートでは、キャリア支援室のご担当者様にお話いただいた内容をダイジェストでお伝えします。

【登壇者】株式会社富士通ソーシアルサイエンスラボラトリの皆様

株式会社富士通ソーシアルサイエンスラボラトリ
本社神奈川県川崎市中原区小杉町1-403 武蔵小杉タワープレイス
事業内容情報システム・ソフトウェアの研究・開発、情報処理に関するコンサルテーション
従業員1,158名(2019年3月末現在) ※約85%がシステムエンジニア
島村 泰子 氏
島村 泰子 氏
ビジネスマネジメント本部人事部
エクゼクティブ・コンサルタント
(キャリア支援室 初代室長)
柄沢 恵里香 氏
柄沢 恵里香 氏
ビジネスマネジメント本部人事部
キャリア支援室室長
梅原 裕一 氏
梅原 裕一 氏
ビジネスマネジメント本部 本部長代理
人事部長
柏 弘樹 氏
グラフィックカタリスト
柏 弘樹 氏
ビジネスマネジメント本部人材開発部

【進行】

水野 みち
水野 みち
株式会社日本マンパワー
フェロー
ソリューション企画部

キャリア形成を支える3つのアプローチ

キャリア形成を支える3つのアプローチ

島村: 〜中略〜 弊社のキャリア施策は、第1期(1991年)から数えて現在28年目を迎えます。
 「組織的な人材育成」「社員による自律的なキャリア開発」「上司からの積極的なキャリア開発支援」という3つのアプローチで展開してきました。

 まず、図の右下にある「組織的な人材育成」ですが、人事制度や処遇、キャリアパスを整備しました。
 次に、図の上部にある「社員による自律的なキャリア開発」。“社員が自分の成長を認識し、モチベーションを持って組織に貢献すること”。キャリア面談や研修は、そのための施策として存在します。
 そして、図の左下「上司からの積極的なキャリア開発支援」。社員が一番悩みを相談したり、自分の気持ちをわかってほしいのは、身近に指導してくれる「上司」だと思います。そして上司も、部下のキャリアを応援したいと思っているはずです。
 そのため、上司の方に実務経験を積んでいただいたり、職場マネジメントのスキルを高めていただいたりする施策にも取り組んできました。

<イベントレポートの一部要約>

社員による自律的なキャリア開発

キャリア開発・人材育成体系図

※ 詳しくはイベントレポート完全版をご覧ください

柄沢:左の図は、弊社のキャリア開発・人材育成の体系図です。縦軸は階層およびキャリアパスのレベルで、横軸は組織開発、専門技術特化能力、キャリア開発に大分類しています。このうち、組織開発と専門技術特化能力は主に人材開発部で担当しており、キャリア支援室では赤枠で囲んだキャリア開発の部分を主に担当しています。

〜中略〜

若手の頃は1〜2年に1回くらいの頻度でキャリアを考える機会を提供し、30〜50代くらいの社員に対しては、5〜10年に1回くらいでキャリアを考える機会を提供するように企画をしています。

<イベントレポートの一部要約>

組織・環境への働きかけ

島村:それでは、あくまで一例になりますが、弊社がどういう形で組織・環境に働きかけているかをお話しします。

1、面談の詳細

 弊社では、80分間のキャリアコンサルタントとの面談で、社員に「CAN」「MUST」「WANT/WILL」のそれぞれについて、自筆で記入シートにまとめてもらっています。
「CAN」:保有スキル、専門分野、能力など
「MUST」:組織からの役割期待や自分の課題
「WANT/WILL」:今後希望することややりたい方向(プライベートなことも含む)
 最近は、価値観・動機・生きがい・働く意味など、内的キャリアについても書いてもらっています。

 記入シートは2枚あり、1枚目はキャリアコンサルタントが面談内容をメモしており、他者が見ることはありません。2枚目は、本人にキャリア(CAN,MUST,WANT/WILL,内的キャリア)を記述してもらい、上長への「報告用シート」になります。
 「この内容を上長に報告していいですか」という開示範囲の確認欄があり、課長のみOK、課長・部長ともにOK等、開示可能な範囲をシートに記載することができます。社員は、面談終了後にまとめ直すことで、より頭の中が整理されますし、上長に開示する部分・開示しない部分も調節できます。

〜中略〜

2、上司・経営層への働きかけ

研修風景

 開示の了承を得た「報告用シート」ですが、まず課長に開示します。その際、課長に「ご本人はこうおっしゃっていますが、どう感じていらっしゃいますか?」と課長にも状況をお伺いします。それによって、「ここは知らなかった」「こう思っているんだね」などと課長の気づきになり、部下に対してよりアンテナが立つようになります。

 また、課長への報告の際、「部署内での人材育成をどう考えていらっしゃいますか?」とヒアリングしたり、課長からの要望を伺ったりしています。また、こちらから「メンター制度を入れたいのですが、どうでしょうか?」と検討中の施策への意見を求めることもあります。ここでお互いに出てきたことを、次年度のPDCAに回しています。
 また、面談後の報告とヒアリングは、課長だけでなく、部長・本部長とも同様の形で行っています。

<イベントレポートの一部要約>

質疑応答 & グラフィックレコーディング

イベントの最後には、参加者との質疑応答の時間を設けました。質疑応答の一部をご紹介します。

Q.支援室の活動が業績に寄与した、あるいは貢献したと思える瞬間はありましたか。

島村様(キャリア支援室 初代室長)
 私たちの活動が、そのまま売上や原価率に直結することは残念ながら無いと思います。ただ、売上アップや原価率改善に到るいくつかのファンクションの強化を、現場のマネージャの方と力を合わせ、一緒にやり続けてきました。
 例えば「リーダーをつくる」「社員のモチベーションを維持する」「上司と部下の関係を良くする」といった施策です。その結果、会社の売上は右肩上がりが続いています。
梅原様(ビジネスマネジメント本部 本部長代理 人事部長)
 島村が申し上げたとおり、定量的・直接的な評価は難しいと思います。しかし、マネージャがキャリア支援室の活動を意識しているなと普段から感じています。また、キャリア支援室の活動は、若手社員のリテンションやエンゲージメントのアップ、また、採用活動でのアピールポイントにつながっていると思います。
柄沢様(キャリア支援室室長)
 社員のエンゲージメントの指標として、富士通グループ全体で「社員満足度調査」を毎年行っています。課題があるかなと仮説を立てている部署は、やはり満足度が低めですが、富士通ソーシアルサイエンスラボラトリ全体では、満足度の値が少しずつ上がってきています。

イベントの内容・様子をまとめたグラフィックレコーディング(富士通ソーシアルサイエンスラボラトリ 柏様作)

キャリア形成を支える3つのアプローチ

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