ちょっと一息

ハッピーキャリアの作り方 vol.97

成長するってどういうこと? 〜成人発達の視点から〜

[2019/04/25]

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 3月9日(土)、講演「企業内キャリアカウンセラー/コンサルタントに向けた学びの場」が東京オリンピックセンターで開催されました。本イベントは、日本キャリア開発協会西関東支部西東京地区と日本マンパワーとの共同企画です。
 企業内キャリアカウンセラーの役割は、転職・就職というよりは、働く社員ひとり一人の成長を支援する機能と言えます。では、社員が成長するとはどういうことでしょうか。子どもの場合、比較的わかりやすいイメージが浸透しています。つかまり立ちができるようになる時期、言葉がしゃべれるようになる時期、思春期、反抗期を迎える時期、など。しかし、大人の場合はどうでしょうか。このテーマについて成人発達の理論をベースに、日本マンパワーの水野みちさんが解説してくれました。
 発達の5段階など、たいへん興味深い内容が詰まっています。ぜひご一読ください。


●講演者
 株式会社日本マンパワー フェロー
 JCDA認定スーパーバイザー
 水野 みち さん


「大人の成長」とは

 「人が成長する」とは、どういうことでしょうか。
 身体的な成長は10代がピーク、記憶力は20代前半、お肌は20代後半がピークだと言われているようです。年を取ると成長しないのか?と思われるかもしれませんが、そうではありません。私たちの「人としての器」は成長し続けることができます。「人としての器」とは、ものごとの把握の仕方、周囲との関わり方、課題との向き合い方などです。みなさんの周囲にも、「あの人は器が大きい人だなぁ」とか、「あの人は大人だなあ」と思うような人はいませんか?
  (会場からのコメント)
 そうですね。そのような人は、自我(私という感覚)が確立されていて、周囲との関係においてもどこか社会的知恵を身につけており、自律している人、自分をその場で上手に活かせる人、などといった印象かもしれません。まさにその通りです。

 この大人の成長について研究を進めた一人が、もとハーバード大学のロバート・キーガン博士です。キーガン博士によると、大人には大人の発達段階があると述べています。
段階ということは、
 ぜひこの成人発達の概念を理解し、意識してみていただきたいと思っています。その理由は2つあります。1つは、器の発達している人でないとキャリア支援者として不向きだからです。支援をしながらも、自分自身の人生を精一杯に生きながら器の成長を目指していただきたいと思っています。
 2つ目として、成人発達の概念を理解すると、自分や相手が葛藤している「もやもや」について「早くすっきりさせてあげるべきこと」ではなく、向き合うべき「成長のプロセス」「成長痛」なのだと理解できます。
 では、成人発達の段階についてもう少し詳しく理解していきましょう。


成人発達の研究の視点

 成人発達の研究は海外で盛んに進んでいます。研究者の一人、キーガン博士は、成人の発達には大きく5段階があると言っています。
 それぞれの段階を「自分はどうだろう?」「どの段階になりたいか?」などを考えながら読んでみてください。

 最初の段階1は、社会人であるみなさんの中にはいらっしゃらないと思いますので、段階2からご紹介します。なお、説明の前に次のことをご理解ください。各段階は、知識や仕事の能力とは関係がないということです。くれぐれもご留意ください。

 では、まずは段階2です。この段階は、「道具主義的段階」です。「利己的段階」とも言われます。この段階の特徴は、自分の関心事欲求を満たすことに主な意識が向けられています。極端に言えば、周囲を道具的に見る段階です。たとえば、「(あの人は自分のために)使える人か?」という見方に象徴されます。「自分にとって得か損か」を判断の中心にする人も、この段階に当てはまると思います。利己的と言っても、ルールやしきたりを守らないわけではありません。ルールを守る理由が利己的な理由(自分が損をしないように、罰を与えられないように)ということです。この段階を「生き抜く」と、必ず葛藤が起こります。それが次の段階への成長のきっかけになります。


【段階3】他者依存段階

 段階3は「他者依存段階」です。段階2の人が「自分の関心や欲求」を判断の中心においているのに対し、段階3の人にとっては「周囲の人との調和や協調性」「規範(家族、組織、社会など)」が大変重要です。たとえば、「会社の決まりだから」「上司がこう言ったから」という理由で、判断や行動をしようとします。
 別の表現をすると、これまでは自分のことしか考えていなかったけれど、さまざまな経験を経て、ほかの人や組織など外の人の気持ちや考えに意識を向ける段階です。先ほどのルールを守るという例で言うと、自分の不利益のためにルールを守るのではなく、「迷惑をかけたくない」「周囲への気持ちを大切にしたい」という動機でルールを守ります。ただ、一方では組織の規範に依存する面が強いが故に、自分で自分を評価することができず、「他者からの評価」を得て初めて「できた」と感じられる段階です。自分が「どうしたいのか?」というよりも、「ここではどういった行動が求められているのか?どうすべきか?」に意識が向きます。
 日本のビジネスパーソンは、この段階の人が最も多いと言われています。


【段階4】自己主導段階(自己著述段階)

 段階4は「自己主導段階」です。「自己著述段階」とも言われます。この段階の人は、自分なりの価値観や意思決定基準を設けることができ、自律的に行動できるという意識の変化が現れます。特徴としては「主体的に行動する」「自分の意見や考えを明確に主張する」「自らの成長に強い関心がある」などが挙げられます。周囲の価値基準や組織のルールを自分なりの視点で問い直すことができます。自分自身の気持ちに対して責任を持つとともに、自分がどうなりたいのかということに対して(周囲の影響を認識しつつも)自分事として捉えられるようになります。

 段階2と大きく異なるのは、段階4では周囲の気持ちも理解した上で、自分の価値観や意思決定で主体的に行動できるという点です。


【段階5】自己変容・相互発達段階

 最後の段階5は「自己変容・相互発達段階」です。自分の価値観や意見にとらわれることなく、多様な価値観・意見などを汲みながら意思決定ができる。自らの成長に強い関心を示すことはなく、他者の成長に意識のベクトルが向かう。他者が成長することによって自らも成長するという認識があり、他者の価値観に興味を持ってコミュニケーションを図る。そのような段階です。利他的な段階と言えるかもしれません。
 もっとも、段階5は世界で2%未満しかいないと言われています。

 みなさんは今、自分がどの段階にいると思いますか?


成人発達理論の補足説明

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 いかがでしたでしょうか。キーガン博士は、成人発達について次のように述べています。

変化が激しく、意思決定のスピードがアップし、職場で多様化が進む環境にある昨今のビジネスパーソンにとって、意識的に発達を促す試みはたいへん重要である。

 現代のビジネスパーソンにとって、発達を促すかかわりや環境は重要だと述べています。先に述べたように、器の大きな人は、多様な意見や価値観を持った相手、あるいは対立した場において、効果的に機能することができるようになります。

 また、キーガン博士は、成人の発達が何によって促されるかについても示しています。

発達は、葛藤、意見の対立、対話、持論化、共感体験、創り出したい未来に意識を向けること、などによって促進される。

 葛藤、意見の対立、対話、持論化、共感体験、創り出したい未来・・なんとなくキャリアコンサルティングの支援領域に近い気がしませんか? そうなんです。キャリアコンサルタントのかかわりによって成長を促すきかっけづくりもできるのです。

 次は、これらを踏まえ、私たち企業内キャリアコンサルタントは、どのような姿勢で社員と向き合うことが望ましいか、などの内容についてご紹介していきます。

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【編集部より】
★水野さんからもお話がありましたが、成人発達の理論は少し難しいという印象を受けました。当日の講演でも、複数の受講者が質問をしていました。でも、非常に興味深い内容です。次回の本コーナーで後編をご紹介しますので、ぜひご一読ください。
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