イベントレポート

お寺で「キャリア」を考える キャリアドックがもたらす企業内キャリアコンサルティングの価値  【前編】導入講演、事例発表 日 時:2016年11月14日(月)13:30〜17:00

2016年4月1日より、「キャリアコンサルタント」の国家資格化がスタートしました。さらに厚生労働省では、同年度より「セルフ・キャリアドック」の普及浸透に力を入れています。セルフ・キャリアドックとは、労働者のキャリア形成における「気づき」を支援するため、年齢、就業年数、役職等の節目において、定期的にキャリアコンサルティングを受ける機会を設定する仕組みのことです。このことにより、労働者の職場定着や働く意識の再認識を促す効果が期待されるほか、企業にとっても人材育成上の課題や従業員のキャリアに対する意識の把握、ひいては生産性向上につながるといった効果が期待されています。

そうした中にあって、キャリアコンサルタントはどのような価値を個人と企業に提供することができるでしょうか。今回のイベントは「お寺でキャリアを考える」をテーマとし開催場所を増上寺に設定、先進的に企業内にキャリアコンサルティングを導入されている企業の「事例発表」をはじめ、参加者同士が語り合いながら課題解決の糸口を探る「ダイアログセッション(対話)」などを実施しました。本レポートは、その模様をダイジェストでお伝えします。

ゲスト(50音順)

浅井 公一 氏
浅井 公一 氏NTTコミュニケーションズ株式会社
ヒューマンリソース部 人事・人材開発部門担当課長
2015年2月、CDA取得(第45期)。NTT時代、当時の最年少係長として昇格。その後、労働組合の担当を7年歴任。2013年、ヒューマンリソース部に異動と同時にベテラン社員のモチベーション向上にチャレンジ。たった一人でキャリア面談を開始し、2年間で700人以上の面談を実施。圧倒的な面談経験回数と、クライエントと本気でぶつかる胸襟を開いたスタイルの面談が社員にシンクロ。8割もの社員の行動変容を促す結果となる。
浅川 正健 氏

(日本の人事部撮影)

浅川 正健 氏浅川キャリア研究所
所長
キャリアカウンセラー(CDA)、厚生労働省セルフ・キャリアドック導入支援事業推進委員会委員。1973年、伊藤忠株式会社に入社。1990年、人事部に異動。2000年12月、講座第1期でCDA資格取得。2001年7月、社内にキャリアカウンセリング室を設立し、室長に就任する。
島村 泰子 氏
島村 泰子 氏株式会社富士通ソーシアルサイエンスラボラトリ
ビジネスマネジメント本部 キャリア開発部 エグゼクティブ・コンサルタント
1級キャリアコンサルティング技能士(国家資格)。産業カウンセラー。IT業界に入社、SE(システムエンジニア)を10年経験後、教育、採用、人材開発業務に従事。2007年、社内に“キャリア支援”業務を体系化し、現在に至る。エグゼクティブ・コンサルタントとして厚生労働省嘱託業務などを含め、社外でも活躍。法政大学大学院キャリアデザイン学研究科(修士課程)。
藤森 健至 氏
藤森 健至 氏株式会社三越伊勢丹ホールディングス
グループ人財本部 人事企画部長
1992年、株式会社伊勢丹入社。2006年より人事部。2011年より株式会社三越伊勢丹ホールディングス人事部人事キャリア担当部長として、三越、伊勢丹の事業会社統合後の採用・人財育成・異動等を中心とした人事制度改革を推進。2016年よりグループ人財本部人事企画部長(現職)として、グループ人事ビジョンである「従業員の力を最大限に引き出し伸ばしていける体制」の実現に向けた人事制度改革、人財育成フロー構築などに取り組み。

進行・ファシリテーター

水野 みち
水野 みち株式会社日本マンパワー
ソリューション企画部 専門部長
国際基督教大学卒業。1998年より、日本マンパワーのキャリアカウンセリング事業に携わる。2005年、米ペンシルバニア州立大学にて教育学修士を取得。帰国後、プログラム開発、及びキャリア相談機能設置コンサルテーションを担当。現在は、組織開発・企業内のキャリア支援に関する研究開発活動に従事。

導入講演

株式会社日本マンパワー 水野 みち

今の時代における、キャリア・組織とは何か?

【セミナー風景】

今、私たちを取り巻く社会はどのような変化を遂げているのでしょうか。例えば、高齢化、少子化、ICT化、グローバル化、格差の拡大、変動性・複雑性の加速といったキーワードが世間を賑わせていますが、これらは私たちの働く環境やキャリアにどのような影響を与えているのでしょうか。事実、働くことのイメージがこの10年あまりで大きく変わっていますが、そうした中で、今の時代に必要なキャリアの考え方はどういうことでしょうか。キャリアと言うと、昔は階段を登っていく、積み上げていくイメージでした。1つか2つのキャリアパスを各自が選んで進んでいくのが、大方のキャリアのイメージだったように思います。あるいはサイコロを振って、出た目の結果に従うように、運に任せながら会社から言われたことをそのままやり続け、キャリアを築いてきたという人もいることでしょう。

いろいろなキャリアに対する考え方がある中、IT業界の経営者・作家として知られるシェリル・サンドバーグが著書「リーン・イン」の中で、「これからはジャングルジムを上り下りするようにキャリアを築いていく」と言っています。今後の働く人のキャリアのあり方を示唆していて、とても印象的でした。ジャングルジムはどこから上ってもいいわけで、自由自在に動いていくことができます。例えば、このようなキャリア観が、これからの時代には必要なのかもしれません。

「セルフ・キャリアドック」をめぐる状況

【セミナー風景】

2016年に国家資格となった「キャリアコンサルタント」に対する期待が高まる中、「セルフ・キャリアドック」に注目が集まっています。セルフ・キャリアドックとは、厚生労働省では「労働者のキャリア形成における気づきを支援するため、年齢、就業年数、役職等の節目において、定期的にキャリアコンサルティングを受ける機会を設定する仕組みのこと」としています。「人間ドック」と同じように、キャリアの棚卸しをする機会を定期的に設けよう(キャリアの定期健康診断)ということです。

では、セルフ・キャリアドックをどうやって企業内に導入すればいいのでしょうか。現在、厚生労働省内でセルフ・キャリアドック導入支援事業が立ち上がっており、そこでモデル企業を募集し、今後、先行的な事例が紹介される予定となっています。また、セルフ・キャリアドックを導入するための資金源として「キャリア形成促進助成金」など、各種助成金が用意されています。そして、セルフ・キャリアドックを担当する(キャリアカウンセリング等を行う)のは、国家資格である「キャリアコンサルタント」登録をしている有資格者となります。

先進企業による事例発表(1)『個と向き合い、一人ひとりの力を最大限に引き出す人事戦略』

【セミナー風景】
株式会社三越伊勢丹ホールディングス

株式会社三越伊勢丹ホールディングス
グループ人財本部 人事企画部長
藤森 健至 氏

グループ人事ビジョンとして、従業員一人ひとりと徹底的に向き合うことを掲げる

三越伊勢丹グループは、全体では従業員数は約2万5000人ですが、本日は首都圏にある三越伊勢丹(単体)従業員数約1万2000人に対して、何を行ってきたかをお話します。まず、経営戦略としての企業メッセージ「this is japan.」の実践にあたって大事にしていることは、「おもてなしには、ムラがあってはいけない」ということ。小売業界では、ベテランでも新人でも、スタイリスト(販売員)全員が夢と誇りを持って、高いパフォーマンスを発揮することが求められます。そして経営の質、つまり販売の現場における「おもてなし」の質を高めていくためには、スタイリスト(販売員)の「当たり前レベル」を上げていかなくてはなりません。そこで、我が社ではグループ人事ビジョンとして「三越伊勢丹グループで働く従業員が持てる力を最大限に引き出し、伸ばしていける体制作りを行う」を定めました。そのためには従業員が、「自分は会社から大切にされている」と思ってもらえることが不可欠です。そこで、1万2000人を超える従業員一人ひとりに徹底的に向き合うことを考えたのです。

先進企業による事例発表(2)『ベテラン社員の更なる活躍推進に向けた取り組み』

【セミナー風景】
NTTコミュニケーションズ株式会社

NTTコミュニケーションズ株式会社
ヒューマンリソース部 人事・人材開発部門担当課長
浅井 公一 氏

50代ベテラン社員に対して行ったキャリア面談の「成果」

私がお話するキャリア面談は、管理職になっていない50代社員に限定して行ったケースです。実はキャリア面談を始めたのは2014年度からですが、この2年間、私一人で合計742人に対して実施しました。その成果として、1つ目が「行動変容率」を上げることができます。行動がポジティブに変わった人の割合が、約8割に達しています。例えば、「勉強会を企画し、自らが講師を務める」「毎週、業務の進捗を報告する」「嫌がっていた研修に参加する」「報告物をチームでいちばんに提出する」「朝、1時間前に出社して英語を勉強する」「家でチームメンバーとパーティをやる」などといったポジティブな変化が見られました。2つ目が「ストレスチェックの判定結果」です。特に、50〜54歳の健康リスクの割合が、産業医が驚くほどの劇的な改善を示したのです。想像した以上に、メンタルヘルスへの相乗効果が表れています。そして3つ目が「50代社員の昇格」です。管理職に昇格した人が、1年目に約2倍、2年目には約3倍に増えています。

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