イベントレポート

キャリア開発シンポジウム2008

〜 2009年に向けた人材育成・キャリア開発支援の動向とは 〜

Date:2008年12月16日

2008年12月16日、日本マンパワー本社にて「キャリア開発シンポジウム」が開催されました。
第1部では、日本マンパワー 教育研修事業本部長 片山繁載がキャリア開発支援の全体像を解説し、第2部では、自律型人材の育成を実践されているブラザー工業株式会社 人事部 キャリア開発グループ チーム・マネジャー 新井重一氏から「キャリア開発支援の取り組み」事例をお話しいただきました。また第3部では、日本マンパワー マネジメントコンサルタント 長隆一を講師に、最新のキャリア開発研修のツールをご体験いただきました。以下にその内容を抜粋・要約してご紹介いたします。

【第1部】講演:2009年に向けたキャリア開発支援

片山繁載

片山 繁載
  • 株式会社日本マンパワー
  • 教育研修事業本部長
  • 人事・キャリアコンサルタント

〜 この不況時代をどう乗り切るか 〜 組織と個人の一体感を高め強い組織を作るキャリア開発を

現場で見られるキャリアの誤解

若年層には様々な『キャリアの幻想』があります。中でも、仕事はまじめにするのですが、“会社は自分を育ててくれる” “希望にあった私だけの仕事が必ずある”と思い込み、現実がそれらと異なることがわかると容易に辞めてしまう若者が増えています。また、中堅層では、『キャリアの幻滅』を感じる傾向にあります。特に最近多いのは、成果主義、MBO、組織管理、部下育成など、やるべき目標がたくさんあることで、“いつキャリアを考えればいいのか……”という状態になっている人です。一方、経営トップ層には『キャリア不信』が見受けられます。“企業も個人も強い者が生き残るものだから余計な支援は必要ない”という勝者論がまだまだ多いようです。

年齢とビジネスステージを考えた支援を

今、社内で行っているキャリア支援の再検証をしてみてください。社員の年齢とビジネス人生のステージを考え、そこに“キャリア開発の方向性”と“会社の期待”がきちんと込められているかどうかを検証するのです。また、各年代によって様々なキャリアの課題があります。その課題に対して誰がどのようなサポートをしていけば、会社の中でその人の力を引き出せるかを考え、年齢や本人の課題に対応したキャリア形成の支援を行うことが大切です。

会場の風景

再検証のポイント(1)〜全体の流れ

キャリア支援の全体の流れを検証する際には、“企業のトップと各セクションでどういう役割を果たしていくべきか”という視点で検証していきます。例えば、経営サイドにはキャリア支援を人材育成・キャリア開発の戦略ツールとして活用する感覚が大切です。同様に、管理者サイドには部下育成の視点(キャリアマネジメント)が大切です。一方、個人にとっては“これがあれば自分が一番自分らしくふるまえる”という自覚(職務と心理の適合)がとても大事になります。

再検証のポイント(2)〜人材活用を検証する

まず、人材活用を本気で考えているかどうかを年に1回は検証します。2つ目に、伸ばすべき人材を伸ばしているかを検証することも必要です。自分で成長する社員に対しては、改めて動機付けをやらないケースが多いですが、1ランク上を目指させる仕掛けをするべきです。3つ目に、組織のモラルやモチベーションの状況をつかめているかを検証します。社員のキャリア支援ニーズはいつも同じではありません。3年に1回は足元を点検し、社員モチベーションの実証を試みます。そして4つ目に、社員育成の仕組みや担当者のスキルが陳腐化していないかの検証です。キャリア支援の担当者を支援する必要性を真剣に考えていただきたいと思います。

片山繁載

強化したい内発的動機

今後いっそう強化したいテーマは、内発的動機です。そのためには、(1)モチベーションをきちんと上げていくこと、(2)本人が“自分の本来のあり方とずれているな”と思う時には、どこかで自己一致をさせてあげること、(3)将来自分がなりたいイメージに沿って成長・発達させていくアプローチ、が必要です。そうすることで、キャリアは時間の経過とともに人格形成に統合されていくと思います。

厳しい時代を乗り切るための提言

今後のキャリア支援の取り組みについては、(1)会社は社員に対し自律とプロフェッショナルを求めていることを宣言する、(2)キャリア支援を経営資源として使いこなすという発想を経営サイドが持つ、(3)社員が“最後までこの会社で頑張ろう”と思えるような信頼される支援体制を貫く、(4)モチベーションと組織との一体感を実現する、という4つの必要性を改めて提言したいと思います。

<講演内容の一部要約>
続きは資料ダウンロードより入手できます

【第2部】事例講演:キャリア開発支援の取り組みについて

新井重一 氏

新井 重一 氏
  • ブラザー工業株式会社
  • 人事部 キャリア開発グループ
  • チーム・マネジャー

誇りとやりがいを持ったプロが自律的に育つ会社を目指して 〜 個から組織、そしてグローバルに 〜

人材育成の考え方

当社では1999年に基本方針と行動規範を示す『グローバル憲章』を掲げ、会社としての理念や考え方をグループとして共有する形でやってまいりました。もちろん、キャリアの研修も一生懸命にやっていますが、それと同時に、グローバル憲章を浸透させる取り組みを行っています。憲章の文言を覚えるのではなく、事例の中で迷った時にどういう判断をするかを自分たちで考えてもらう機会を教育の中で多く設けることで、当グループとしての考え方を浸透させていくことに力を入れております。
人材育成の考え方としては、会社がすべてを教えるのは非常に難しいため、『自律型社員の育成』を取り入れています。“こういう自律型社員になってほしい”ということを、新人の時から事あるごとに繰り返し伝えるようにしています。ただ、自律型社員の育成は教育だけで上手くいくものではありません。人事施策全体で人を育てていくことを意識してマネジメントを行っています。
人材育成はローテーションで行い、“自らがキャリアを選択し、プロを目指す”姿を目指しています。その上で、人事主催でキャリアデザイン研修を実施し、それを軸に自律型社員として、“自ら考え、自ら学び、成長する”ことを支援するというスタンスです。

キャリアデザインの研修

会場の風景

キャリアデザインの研修は年4回(入社時・30歳前後・40歳前後・50歳前後)行っています。20代後半から30代前半は自分の専門分野を仮決めする時期。30代後半からはプロ人材を目指し、自分の専門性は何かを考えていただく時期。50代では総まとめとして、後輩の指導や、自分が何を残すのかを考えていただく時期と考え、そうした機会になるよう各年代で研修を行っています。

研修を受けるタイミングは、各年代の前後5年間で選択できる仕組みにしています。キャリアデザインの研修では人を集めるのが難しいのですが、“自分で理解してこの研修に来た”という状況を作りたいため、『5年間のうちに自分のタイミングで受けてください』と指示を出し、自ら手を上げる形で参加してもらっています。

人事教育として絶対にやるべきことは、定期的にガソリンを注入して元気になってもらうことです。私どもは、『キャリアデザインの研修は自律型社員が働くうえでのガソリンである』と考えています。研修の場で他人に自分のことを話したり、他人の話を聞いたりすることにより、自分をよく考えることができます。“自分はこうしたかったんだ” “これが向いているんだ”ということが浮き彫りになる。それがこの研修の特徴ではないかと思います。研修後は元気になって帰っていただけますから、非常にいい研修だと思っています。

人事情報システム『キャリアネット』

自律型社員の育成として、自分で考え、なりたい自分を目指して上司と一緒に取り組んでいく仕組みは、以前からも紙ベースで行ってきておりました。それらを集約してデータベース化したのが、『キャリアネット』という人事情報システムです。キャリア開発計画や能力開発、自己申告、過去の業務履歴や評価などが蓄積でき、上司と自分の間だけでなく、全体に『見える化』したのがキャリアネットという仕組みです。キャリアネットの導入により、今どこに問題があるのか、どこに育成のニーズがあるのかを把握しながら人材マネジメントを進められます。

新井重一 氏

キャリアネットの全体構成は、イントラ上にwebサイトが個人ごとに用意されており、自分のキャリアプラン、今年の自己啓発やスキル開発の目標、将来の到達イメージ、ポジションや資格、3〜5年ごとにどうなっていたいのか、今年どういうことをしたいのか、その上で強化すべき点、取り組み後の結果が入力できるようになっています。
なお、キャリアデザインの機会は10年に1度設けています。キャリアネット上の『キャリア開発計画』に自分の目指したい姿を、上司と相談しながら書き込んでいただきます。そして、そのなりたい姿をベースに、自分がどういう形でそれを実現していくのかを自分で計画し、半期に一度、上司と面談をしながら良いスパイラルを回していくことを毎年繰り返し行っています。

従業員からみたキャリアネットのベネフィットは、『キャリアデザインの支援』です。キャリアを考えるための材料はすべてキャリアネット上に蓄積されているので、これをベースに考えていただくことができます。
マネージャーにとってのベネフィットは、『計画的で継続的な人財育成ができる』ことです。過去の情報がすべて見れますし、人財育成の計画を上司と部下で共有することができるので、人事異動などで上司が変わっても、継続した育成計画の立案が行えます。
会社にとってのベネフィットは、『適材適所の人財配置ができる』点です。新しい事業をやろうと思った時や、ローテーションをかけようと思った時に、キャリアネットの情報をベースに考えることができます。また、新任マネージャーの戦力把握と予備情報などにも活用しています。

異動に対する気持ちや希望など、ローテーションに対する意識調査もキャリアネット上で行っています。ただ、内容によっては上司には話したくないこともあります。そこで、人事部だけが見ることのできる意識調査の項目もあります。上司に伝えられない異動希望や家庭状況、人事施策に対しての意見などは、キャリアネットを通じて直接人事部に届き、人事部で対応しています。

<講演内容の一部要約>
続きは資料ダウンロードより入手できます

この後、第3部 体験:キャリア開発研修 として、日本マンパワー マネジメントコンサルタントの長隆一により、キャリア開発支援の全体像の解説や、最新の研修ツールを活用した体験を行いました。実際のキャリア開発支援ツールに触れ、キャリア開発支援の考え方や方法の理解が深まり、大変ご好評いただきました。