イベントレポート

「メンタルヘルス・マネジメント」の実践

-

Date:2008年05月22日

2008年5月22日、日本マンパワー本社にて、「メンタルヘルス・マネジメント」のセミナーが開催されました。
第1部の基調講演では、松本桂樹氏(ジャパンEAPシステムズ)から職場のメンタルヘルスの最新情報をお話しただき、第2部のパネルディスカッションでは、実際に企業の総務・人事部門でメンタルヘルス対策に取り組まれている方々を交えての意見交換が行われました。
以下、その内容を一部抜粋・要約してご紹介いたします。

【第1部】セミナー概要(抜粋・要約

松本 桂樹 氏

講師 松本 桂樹 氏

最新・職場のメンタルヘルス 〜 リーダーうつの予防と理解不能な部下への対応 〜

メンタルヘルス問題の最新動向

「消費社会で育った現代の若者は権利意識が高いといえ、若手社員と管理職との価値観のギャップが発生しています。また、性格の問題なのか、精神疾患なのかが非常に不明確な若い方が増えています。一方で、精神科を受診したり休職する若手社員が増加したことで、管理職の対応負荷が高まっています」

昨今の若者のメンタル不全の傾向

「最近よく、若い方の早期退職の問題について、人事の方から悩みを伺います。以前に比べて仕事との距離感が自由になり、仕事に対してフレキシブルでいようというスタンスの若者が増えているのです。このことは、企業にとって新しい問題が増えてきたことを意味しています」

若年層に見られる“現代型うつ”の特徴

「1970年代生まれ以降の人たちを中心に、適応障害やディスチミア親和型うつ病、現代型うつ病といった新型のうつ病が多く見受けられるようになりました。新型のうつ病は自己中心的で、“好きなことはできるけれども仕事には行く気がしない”というように、場面選択的に症状が出る場合が多くなっています。従来よりも神経症的で、たとえば、仕事に行こうとするとお腹が痛くなるなど、体に症状が出てくるという特徴を持っています」

会場の風景

“現代型”に合わせた対策を

「従来のメンタルヘルス対策を、若い方にそのまま適応していくのは難しい側面があります。不安やリスクをなくそうとする“ネガティブヘルス”から、明確な目標をめざし、健康を増進させる“ポジティブヘルス”へと、メンタルヘルス対策を変化させていかなければなりません」

若年層への対応スタンス

「若年層への対応は、愛とルールを二本柱とするのが基本です。愛という部分では、イライラしたり怒ったりせず、冷静に、客観的にわかるように説明することが重要です。ただ、ルールがないと愛を示せないため、ルールを明確化することが前提です。また、定期的にコミュニケーションを図り、価値観のギャップを埋めていくことが非常に大切になります」

環境変化時の注意点

「メンタルに関わる疾患は、環境の変化に伴って発症する場合が多くなっています。ですから、新入社員の配属や部下の異動など、部下に環境変化が生じた際には、上司が定期的に個別面談をし、部下の価値観を理解するとともに、仕事の意味や楽しさの確認をしていくようにしてください」

松本 桂樹 氏

上司をサポートする対応策

「部下を理解しようと思って話を聞いていると、今度は上司にストレスが溜まってきます。“部下の話を聞くのは上司の仕事”だという明確な位置づけをした上で、上司の疲弊を防ぐとともに、専門家のサポートを活用し、上司を守る対策をしていくことが重要です」

就業規則で押さえるべきポイント

「今後はますます、若い方や新卒の方の休職などの問題が増えていくでしょう。しかし、就業規則や休職規定でルール化しておけば、悩まないで済む問題がたくさんあります。会社のリスクマネジメントとして、特に休職や職場復帰に関するルールはしっかり明確化しておきましょう」

【第2部】パネルディスカッション概要(抜粋・要約)

メンタルヘルス・マネジメントと人事担当者への期待

コーディネーター
尾崎 健一 氏
臨床心理士

社員に優しい会社になるために、弊社に最適なEAPを確立していきたい

パネリスト 麻野 耕一 氏
  • 大成建設(株)
  • 人事部 健康管理室 室長
パネリスト 齋藤 義文 氏
  • 大成建設(株)
  • 人事部 健康管理室 次長

パネリスト

「弊社では、2001年から(株)ジャパンEAPシステムズと契約し、メンタルヘルス対応を実施しています。導入にあたっては、パンフレットを社員に渡すと同時に、ご家族にもお使いいただけるよう、社員の自宅にも送付しました。管理職に対しては、全国の支店16カ所を松本先生と一緒に回って説明を行いました。また、さまざまなケーススタディを盛り込んだビデオを全国の作業所に配布したほか、社員に信頼してもらうために社員組合にも協賛してもらい、ホームページや季節ごとのお知らせなどで継続して情報発信をし、社員が気軽に相談できる土壌づくりをしてきました。

導入当初の相談件数は月50件弱だったのが、導入して丸6年経つ現在では、月150件を超えるようになりました。この間、全社員の約10%にあたる人がカウンセリングを利用しています。

担当者として気をつけている点は、外部委託だからといってカウンセラーの方にすべてお任せしてしまわないようにすることです。社員に優しい会社になるために、弊社の特性や問題などをきちんと説明し、頻繁に情報を交換し合いながら、弊社に最適なEAPを確立していくつもりで対応しています。

今後は、休職していた社員の復職プログラムを確立することが必要だと考えています。休職日数や医師の診断書だけで判断するのは非常に危険ですから、たとえば復職準備室のようなものを作り、復職リハビリテーションができるような環境を作っていけるよう検討してます」

メンタルヘルス・マネジメント検定の知識によって自信を持って対応できるようになりました

パネリスト 永井 泰子 氏
  • マスミューチュアル生命保険(株)
  • 人事総務部 グループ長

会場の風景

「弊社では現在、外部委託を利用せず、何か問題が起こった場合には、人事相談部員が個別に対応する形をとっています。ですから、ケースによっては、私自身が専門機関と連携をとりながら対応することもあります。そうした際に、メンタルヘルス・マネジメント検定の受験で得た知識は非常に役に立ちました。

受験前までは、かなり経験値に頼っていた部分があったと思うのです。でも、受験したことにより、法律的な知識のほか、メンタルヘルスをマネジメントするうえでの“あるべき姿”や“押さえるべきポイント”を学ぶことができました。知識としてのバックボーンができたことで、以前よりも自信を持って対応できるようになりました。

今後は、会社全体としてメンタルヘルス対応を制度化して取り組んでいけるような仕組みづくりを検討していきたいと考えています。

今後、重要になってくるのは人事の方をサポートする仕組みづくりです

パネリスト 松本 桂樹 氏
  • (株)ジャパンEAPシステムズ
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士
  • シニア産業カウンセラー

「私が一番サポートしなければと思っているのは、人事の方たちです。管理職は人事に助けを求めますが、人事部員は誰に助けを求めたらいいのかわからず、結局、一人で頑張っているケースが多いからです。

また、人事の方が問題を抱えきれなくなると、どうしても医療機関に任せっきりになってしまいます。すると、病気の人がどんどん増えていくばかりです。メンタルヘルスの問題は、他の病気と違ってグレーゾーンがあります。早期発見・早期治療で良かったという場合も当然あるのですが、健康的な側面から見ると、疑わしきはすぐに受診を促すのでなく、まず職場の中でできる対策を進めていくことが、重要と考えます。

人事の方が負担を抱え込まないようにするために、また、企業のリスクを軽減するためには、人事の方がマネジメントの観点からメンタルヘルスの知識を身につけていくことが大切になります。

メンタルヘルス・マネジメント検定は、カウンセラーの資格ではなく、専門家でもカウンセラーでもない方がメンタルヘルス・マネジメントを行う際の指標として活用できるように作られています。社内の仕組みづくりにも役立つと思いますから、ぜひ活用いただき、人事の方に余裕ができる組織体制づくりが促進されることを願っています」