イベントレポート

キャリア相談サービスの動向と活用

〜 なぜ今キャリア相談サービスが必要とされるのか 〜

Date:2007年11月29日

2007年11月29日、日本マンパワー本社にて標題のセミナーが開催されました。
同セミナーは、野間葵氏(ガンボキャリア開発センター・センター長)の講演(第1部)、セミナー参加者による各グループでのシェアリング(第2部)、上篤氏(CDAインストラクター)、河原美子氏(富士ゼロックス・キャリア相談室担当)、石野義貴氏(千葉興業銀行・人材開発室キャリア・アドバイザー)らによるパネルディスカッション(第3部)という3部構成で行われ、講師と参加者の間で熱心な意見交換が見られました。以下、その概要をレポートします。

【第1部】講演:キャリア相談室の設立と運用

野間葵(のままもる)氏

野間葵(のままもる)氏
  • ガンボ(Gumbo)キャリア開発センター
  • センター長

キャリア相談室の仕事とは、人間を薪や石炭のような燃えるものにたとえると、人が燃え続けるために酸素を供給し続けることだと思います。つまり、故黒澤明監督の映画『生きる』の市民課長の渡辺ではないが、人が死ぬまでに、働き方を含め、どのような自分の人生物語を持ち、自分という個別性を発揮し、加えて、周りの期待に応えるかというシナリオ(人生芝居の脚本)作成のお手伝いが、肝の仕事だと言えます。

しかし、社員の側が気軽にそんな相談ができますか?と聞かれるなら、実際は難しいのが実情で、キャリア相談室に閑古鳥が鳴いている企業も多い。社員が人生の大切なテーマを相談するのは、日ごろ信頼している兄貴分の先輩などに、居酒屋で「まあ聞いてくださいよ」と、ピアカウンセリング状態を望むのが一般的です。そのため、キャリア相談室は、守秘義務が当然であり、電話相談も含め、おっとりと聞いてくれる保健室的な感じが求められているのではないかと思います。こうした実情から、組織上の位置づけは、他の経営の物差しとは逆の機能ぐらいの考え方に立つことが重要だと思います。「日々忙しく走り続けている社員に、走らなくていい、立ち止まってください、そして、自分の足元(脚下照顧)や、遠くを見通すことを考えてください」という組織だと考えています。

社員のキャリア形成施策は、「人事諸制度」「上司のマネジメント」「本人の気づき」の三つが、三位一体となってトータルに機能することが重要です。キャリア相談室だけですべてをカバーはできません。また、キャリア相談室が、社員間に口コミで波紋のように安全な場だと伝わっていくことが真価と言えます。目標管理、自己申告などは、建前のコミュニケーションに終始してしまうことがあります。そのため、キャリア相談室は、社員と本音の会話をする組織であるべきだと思います。なぜなら、組織の力はコミュニケーションで決まるものであり、組織が社員の脈拍、呼吸を分かるぐらいの関係性なら、組織で人が熱くなり、思わぬ力がでるものだと思うからです。

社員が自分のキャリアをどう描くかは本人次第で、社員にキャリア形成の主体性や判断をゆだねるわけですが、社員自身が素晴らしい価値観、能力を有し、豊富なネットワーク、情報を持っていると信じ、その可能性の世界に案内をするのが、キャリア支援なのではないでしょうか。また、人生を仕事だけで考えることはありえないので、仕事と個人生活の両サイドからキャリアを考える必要があり、ただ仕事人というよりも、人間として、人生全体の生き方を支援していくことが大切だと思います。

その考え方が、社員のキャリア自立、自律のベースであるし、キャリア支援によって自分で考え、行動し、責任を取ることのできる、自立・自律型の人材が育ちます。その人材の総和が、組織の活力を高め、競争力や成長につながり、結果として、魅力ある企業につながっていくのではないかと考えています。

<講演内容の一部要約>

【第2部】各グループでのシェアリング

キャリア開発支援やキャリア相談室の開設・運営についての課題や問題点を共有するために、参加者がグループに分かれ、シェアリングが行われました。
最後に各グループから、相談室の立ち上げに伴う課題や問題点などが発表されました。

【第3部】パネルディスカッション

河原美子(かわはらよしこ)氏

河原美子(かわはらよしこ)氏
  • 富士ゼロックス
  • キャリア相談室担当

自分なりに手を打てる人材になってもらうためのサポート、サービス

弊社の「キャリア相談員」の7、8割はダブルジョブの人が担当しており、実際は社員が社員に対して相談をしている形になっています。弊社は1999年に人事制度を変更し、成果主義、役割グレードを導入しましたが、ただ役割を作っても、それに見合った仕事に対して希望する社員が登用されるようにしなければ、努力して力をつけていくことは難しいことがわかりました。そこで、車の両輪のもう一つの車輪として、富士ゼロックスが求める人材像として「自りつ(立・律)人材」というものを打ち出しました。つまり、きちんと自分なりに手を打てる人材になってもらうためのサポート、サービスという観点から、キャリア相談室が動いているわけです。その後、キャリアという1本の軸を通した組織が必要ではないかと考え、2002年10月、キャリア相談機能が組織立ちました。

キャリア相談室の目的は「社員のキャリアに関する多種多様な問題・悩みの解決を支援する」ことですが、最初からそこまでできたわけではありません。最初は、キャリア相談室といっても、どんな相談をすればよいのか、キャリアの定義もわかりませんから、トライアル期間を設けました。このトライアルで、女性の相談に乗れるワーキングマザーの相談員や、管理職で人望がある相談員、営業・保守サービス・技術開発・物流サービスなどいろいろな職種のことがわかっている相談員などがいたらいいというイメージをつかみました。

現在、半年に全国で200〜250名規模の相談件数を受けています。ダブルジョブという相談員の制度を使っている特性上、現業が忙しいという場合は違う相談員があたります。また、何回でも相談できるというのがキャリア相談室のいいところです。相談者と合わなければ、次は違う相談員をあてるようにしています。これまでの経験で実感したことは、傾聴の大切さです。相談者の感情や表情など細部に集中しながら傾聴していくと、自分で問題点に気づいて、自ら解決するとっかかりを見つけていただけるのです。また、キャリア相談は、人事制度や人材開発機能などと連携することで機能の活性化に繋がると思います。企業におけるキャリア相談には育成という面もあり、その点でも社員が相談に乗るというこの制度は非常に大きな意味があると思います。

<講演内容の一部要約>

石野義貴(いしのよしたか)氏

石野義貴(いしのよしたか)氏
  • 千葉興業銀行
  • 人材開発室キャリア・アドバイザー

企業が個人のキャリアを支援・サポートすることが大切であると考えています

弊社のキャリア開発支援制度のキャッチフレーズは、「行員個人が『いきいき』した銀行に」です。「いきいき」とは「個人の自律」であり、その実現のために企業が個人のキャリアを支援・サポートすることが大切であると考えています。それに加えて、現在は「上司の支援」も重視しています。また、個人の自律のためには、自分が何をしたいのかという「自己理解」と、企業がどういう方向へ進み、個人にどうしてもらいたいのかという「企業理解」が必要と考え、この2つを徹底してやっていくことになりました。現在は、さらに上司の「他己理解」も加えています。なかでも自己理解は大切で、弊社ではWILL,CAN,MUSTの三つで定義しています。企業理解の推進のためには、WEBなどによってどんな人材を求めているか、どんな仕事があるのか、というように情報を提供しています。

2004年にキャリア開発支援窓口を立ち上げましたが、どこに作るかについて、正直もめました。人事にするか人材開発にするか。いろいろ検討した結果、相談の機密性・相談しやすさ、自己のキャリアビジョンを作ってアクションを取ろうとすれば必ず能力開発がからんでくるはずだということで、人材開発室の中につくりました。現在、3名のキャリア・アドバイザーが兼任で、(1)相談業務、(2)研修企画・運営業務、(3)キャリア開発支援に関する施策の提言、啓蒙活動を行っています。「窓口にはどんな話が来ているのか」について、守秘義務の観点から、相談者の名前については窓口以外の者には一切明らかにしません。しかしながら、一定期間の中での相談情報を当行の問題として取り纏め、課題化し、その情報については人事総務部と共有しようということで、いま(3)の役割が重要になっています。

もともと窓口が若手のよろず相談としてできた経緯があり、相談者の8割は20代です。相談内容は人間関係が7割。3年目に入ってから、少しずつキャリア形成に関する相談が増えてきました。特に若手行員は毎年定期的に相談に来て、「今年はこういう方向にトライしてみたい。テーマを広げてみたいけれど、どうですか?」というように定点観測みたいな形で使っています。上司や支店長も部下にキャリア相談を促してくれているおかげで、相談者は増えてきています。

<講演内容の一部要約>

その後、上篤氏(CDAインストラクター)がファシリテーターとなり、両講師と参加者の間で質疑応答が行われ、キャリアWEB、労働組合との情報交換、コンピテンシーとキャリア開発との関係などについて熱心な議論が展開されました。