イベントレポート

●イベントレポート 最新!メンタルヘルス・マネジメントセミナー(07年6月14日・東京会場)

日本マンパワーでは、企業の人事・教育部門のご担当者様を主な対象に、「メンタルヘルス・マネジメントセミナー」(参加費無料)を全国7ヶ所で開催し、約400名の方にご参加いただきました。その一例として、2007年6月14日に東京会場で行われたセミナーについて、講演内容の一部を抜粋してご紹介いたします。当日は約80名のご担当者様にご参加いただき、熱気のあるセミナーとなりました。

第1部セミナー概要 (抜粋)

松本 桂樹 氏/

講師
松本 桂樹 氏

メンタルヘルス対策における重要ポイント 〜若年層に何が起こっているか〜

メンタルヘルス対策の最新事情と新たな問題

「精神疾患による労働災害、過労死による労働災害の申請・認定件数が年々増えているなか、メンタルヘルス対策を促進している企業は増えています。その結果、管理監督者のうつ病に関する知識は大きく向上されました。
 しかし一方で、(1)うつ病と診断され休職に至る社員の増加、(2)休職・復職のサポート体制の未整備、(3)仕事との適度な距離感が取れない若年層への対応、(4)管理監督者への負荷の高まりなど、新たな問題が発生しています」

うつ病の傾向と事例

「従来から、うつ病にかかりやすい人は、“メランコリー親和型性格”という言葉で表現され、几帳面、生真面目、凝り性、完璧症、そして自己否定的、感情表現が苦手な人と言われています。うつ病の診断基準や治療法については、多くの知見が蓄積されています」

若年層に多く見られる“現代型うつ”

「最近では若年層を中心に、逃避型抑うつ、自己愛型うつなどと呼称される現代型うつが多く見受けられています。現代型うつは、自己愛傾向、回避傾向、依存傾向のある人がなりやすいと言われ、企業としてどのように対応していくべきかが問われています」

うつ病に似た症状とその対策

「近年では、うつ病と似た症状をもつ適応障害や気分変調症の人も増えています。部下の様子がおかしいと感じた時、すべてを『うつ病』だと捉えるのではなく、うつ病に似た症状があることも念頭に対策を行うべきです」

上司に求められる「若年層への問題対応」

「精神論で仕事に対する主体性や自律性を求めても、管理職の価値観にフィットする若い人は今後少なくなっていくでしょう。そうした若手社員への対応の原則は、イライラしたり怒ったりしない、大目に見る形でルールを緩和しない、意識改善を求めるのではなく改善すべき行動を明確にする、などが重要といえます」

コミュニケーション上の問題点と対応策

「コミュニケーションにおいて重要なポイントは、上司が部下と定期的な枠組みでコミュニケーションを行うことです。部下一人ひとりの物語に上司が定期的に耳を傾け、本人の口から、今の仕事の意味や大変なことを語ってもらうのです。上司は部下の話を否定せず、部下の個人レベルの「仕事の意味」を理解し、困った時には助けになることを伝えることが大切です」

メンタルヘルス対策の新たな課題

「今後のメンタルヘルス対策で注意すべきことは、管理監督者自身のメンタルヘルスの悪化です。メンタルヘルス対策に積極的に関わらざるを得ないのは、管理監督者、特に中間管理職の人だからです。この人たちへのサポート体制を考えていくことが、非常に重要になってきます。管理職をサポートする仕組みとして、現在はEAPというプログラムが脚光を浴びています。EAP(Employee Assistance Program:従業員援助プログラム)は、従業員個人および家族と同時に、管理職・人事担当者の相談を受ける機能を必ず持ち合わせています。ラインケアの担い手をサポートする仕組みとしては、EAP活用が最も有効だと考えています」

第2部セミナー概要(抜粋)

芦田 正明 氏/

講師
芦田 正明 氏

メンタルヘルス対策とキャリア教育のポイント 〜リテンションからキャリア自律へ〜

マネジメントを行う上での心構え

「メンタルヘルス対策を行う際には、専門家と素人の判断基準を厳密に分ける必要があります。『専門家でない人がうつや適応障害などの病名を判断できない』ことを前提に、マネジメントを行うべきです。またその際、①概念の共有化、②マネジメントへの展開、③個別ケースへの具体的対応の3つの観点で考えることが重要です」

不適応状態の事例と職場の対応方法

「みなさんは病名の判断をすべきではありませんが、部下が不適応だという状態は判断できます。そうした時は、メンタルヘルスを背景にしながらのマネジメントを行うことが必要になります。企業のご担当者が専門家になる必要はありませんが、マネジメントを行う上で必要な知識や関わり方については学ぶべきだと思います」

メンタルヘルスとキャリア教育の考え方

「企業では今、組織人の自律(立)化が求められています。社員の自律は、一方では好き勝手を言うことにもつながります。それを組織のエネルギーに変えていくマネジメント観がなければ、本来の自律にはならないのです。残念ながら、現状においては自律した組織人へのマネジメント概念は整理されていません。ですから、社員に対して自律の必要性や基本をキャリア教育していくと同時に、自律した組織人をマネジメントする概念を構築する必要もあります」

マネジメントにおける人間理解

「メンタルヘルスの視点で人間理解をする際には、医者などの専門家とタイアップして病気か健康かの客観的判断を行うと同時に、悩みが浅いのか深いのかという本人の主観に関わっていくことが大切です」

ストレスの仕組みと特徴

「ストレスマネジメントは、外部刺激であるストレッサーを軽減する観点もありますが、ストレッサーを個人がどう受け止めるかという主観(ストレス)について、マネジメントする視点が必要です。対応方法としては、①ストレッサーを受け止める受信機能の感度を調整して感受性の視点をずらしてみる、②ストレス耐性自体を磨き対応能力をつける、という2通りが挙げられます」

働く意味の創造

「今、“何のために働くか”の価値観が多様化しています。人は意味のある苦労には立ち向かいやすくなります。『自分はこういうふうに働きたい』という“働く意味の創造”をしておくことは、ストレス耐性を強化することにもつながります。入社3年目くらいになったら一度キャリア教育を行い、自分なりの働く意味を考える機会を設けると良いでしょう」

モチベーションとキャリアの発達課題

「仕事へのモチベーションは人によって異なり、キャリアの段階に応じても変化します。『やりたい仕事ができる』と考えて入ってくる新入社員は、入社数年で『こんなはずじゃなかった』というリアリティ・ショックを受けます。30代半ばのキャリア中期を迎える中堅社員は、『この仕事は本当に自分に向いているのか』と自分探しを始めます。こうしたそれぞれの段階に適した課題解決が望まれます」

動機付け要因とキャリア教育

「ある事をなした直後に起きる出来事(強化子)がプラスの動機付け要因であれば『もう1回やろう』とがんばります。従来はこれが昇進や給与でした。価値観が多様化した現代では強化子も多様化しています。個々人の持つ強化子の多様性を理解するマネジメントが必要です。と同時に強化子に左右されずに、働くこと自体の意味を自覚でき、自身でモチベーションを管理できる自律観も必要です。そのため、社員には①何のために働くのか、②どうすれば自分が元気に働けるのか、を考える時間が大切です。キャリア教育を導入することで、企業は社員のモチベーションを向上でき、個人は組織人としての自律を身につけられます。こうした“働く意味の自己確立”や“モチベーションの自己管理”などの自律観は、メンタルヘルス対策としても重要な視点となります」

セミナー後記

現代のメンタルヘルスマネジメントでは、最新の若年層の傾向を捉え、キャリアとメンタルの2つの軸で
従業員の自律を目指すとともに、管理職には必要な教育と充分なサポートを行うことが必要だといえるでしょう。